堀江貴文氏、山田昌弘氏にみる極論の使い方:ちきりんの“社会派”で行こう!(2/2 ページ)
一見、穴だらけでありながらも、本質をついていることもある“極論”。進むべき道をはっきり示すために、リーダーは「極論という方法論」を身に付けるべき、とちきりんさんは主張します。
堀江貴文氏の論法
元ライブドア社長の堀江貴文氏も、いつもコトの本質をついた鋭い発言が多いのですが、彼の発言にもこの「極論・暴論の妙」をよく感じます。
以前、彼がベーシックインカム制度を支持する理由の1つとして、「20万円の給与をもらってマイナス30万円の価値の仕事をしている人がたくさんいる」と言っていました。
大半の人は福祉的な観点からベーシックインカムを語りますが、彼の考えでは「ベーシックインカムの導入により、社会に害悪を及ぼす仕事をしている人を排除できること」がベーシックインカム制度のメリットだというのです。
この「くだらない仕事をしている人には、お金だけ払って遊んでいてもらいましょう」という意見を、多くの人は暴論、極論として批判するでしょう。
けれど重要なのはその中心にあるメッセージです。今の日本には、給与をもらって、高い能力を発揮して一生懸命働き、その上で社会に「マイナスの貢献」をしている人がたくさんいます。しかも下手するとそういう人が「権力の要」にいます。しかも多くの場合、彼らは「自分たちが社会の進化の邪魔をしている」という感覚を持っていません。
この、「お金を払ってでもそういう人には仕事を辞めてもらった方がいい。それくらい、これは大きな問題なのだ」というメッセージを伝えるために、「極論・暴論という方法論」が非常に効果的なのです。
リーダーに求められる“極論”
ちなみに、この「極論という方法論」は、リーダー向きの思考方法です。
組織の上に立つ人にとっては、細かいことより先に、まずは進むべき道を大きく示すことが重要です。右に行くのか左に行くのか、何が問題で何が目指すべきものなのか、それを大胆に明確に示すこと。それがリーダーに求められることです。
「A案は●●の点ではよいが△△の点ではこういうデメリットがあり、××の点でみるとこうである。一方のB案は……」、こういう思考は実務家の思考です。そもそもこれでは、国として、組織全体として、どちらの方向に進もうとしているのかさえ分かりません。大きな方向性が示されることはなく、ひたすら詳細を詰めることに執心する人が上に立つ組織の不幸さについては、日本人ならみんなよく知っているでしょう。
リーダーに求められることは、実務家に求められる資質とは違います。上に立つ人には批判を恐れず、「何が最も重要なことなのか」だけを明確に主張できる、大胆な極論をどんどん語ってほしいと思います。
そんじゃーね。
著者プロフィール:ちきりん
兵庫県出身。バブル最盛期に証券会社で働く。米国の大学院への留学を経て外資系企業に勤務。2010年秋に退職し“働かない人生”を謳歌中。崩壊前のソビエト連邦など、これまでに約50カ国を旅している。2005年春から“おちゃらけ社会派”と称してブログを開始。著書に『ゆるく考えよう 人生を100倍ラクにする思考法』がある。Twitterアカウントは「@InsideCHIKIRIN」
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