震災直後の、学校の対応は適切だったのか:吉田典史の時事日想(4/4 ページ)
東日本大震災の発生を受け、宮城県石巻市にある大川小学校は甚大な被害を受けた。津波が押し寄せ、全校児童の7割が死亡または行方不明の状態だ。避難する際、学校のとった行動に誤りはなかったのだろうか。
保護者や学校との“対立”
毎日新聞(4月18日)は、保護者や学校との“見解の相違”を報じている。
『学校や教育委員会の保護者への説明会では、校庭で点呼を取るなどした対応に「なんですぐに逃げろって言わなかったのか」と非難の声も出た。一方で「108人誰も欠けないように点呼し、先生はよくやってくれた。誰が悪いと思ったことはない」と話す保護者もいた』
教育委員会は産経新聞の取材に「想定外の津波だった。山が崩れる危険がある中、農道を行く以外に方法があったかは分からない」と応じている。
最後に、教師は答えた。
「事前に大きな地震が来るかもしれないと職員間で話し合っていたならば、学校からの避難場所やその後の行動を規定しておくべきだった。その意味で、危機管理マニュアルの不備と言わざるを得えない。それがない中での避難であったならば、どんぶり勘定ならぬ“どんぶり避難”と思える。
説明会で「誰が悪いと思ったことはない」と発言した保護者は立派。自分だけがよければよいという風潮がある時代で、このような発言が出るならば学校と地域はきっとうまくやっていたのだろう。
今後、大地震が来たとき、地域がどうなるのかをシミュレーションしておく必要がある。地震の専門家がテレビで説明する地震やその後の津波のシミュレーション画像を地域別にして各教育委員会や学校に提供してほしい」
これらは今後のためにも検証をしていく意味はある。そこに意見の違いや衝突はあるだろうが、教職員や児童らの生きたかった思い、声なき声に耳を傾けていくべきではないだろうか。
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