社会を変える“ボタン”を探せ:ちきりんの“社会派”で行こう!(2/2 ページ)
多くの人が同じように「変えないといけない」と言っているにも関わらず、変わらないまま存在し続けているものがしばしばあります。ちきりんさんは「物事を変えるには“ボタン”を探さないといけない」と考えます。
“ボタン”を探せ
ネット上で積極的に発言している人や声の大きい人なんて、世間では傍流だからでしょうか? 確かにそれもあるでしょう。けれどもう1つ、一定数以上の人がそうだと思っていても現実が変わる気配を見せない理由は「ボタンが見つからないからだ」と、ちきりんは思っています。
例えば、明るくて寝られないので電気を消そうとしたとしましょう。「眠るためには電気を消せばよい」ということは分かっています。でも、その照明を消すボタン(スイッチ)の場所が分からないと消せません。
問題は分かっているんです。明るくて眠れないことです。どうすればいいかも分かっています。あの天井の照明を消せばいいんです。ところが、それを実現するために押すべきボタンがどこにあるか分からない。だから状況が変えられないのです。
ちきりんも同じです。ブログや記事に「こうあるべき」「こうなるべき」という意見は書けても、「ここにソレを変えるボタンがあるんです!」と書くのはすごく難しいです。なぜなら、その“部屋”は自分の部屋ではないからです。私はその分野の専門家でも、自分がその世界で働いたことがあるわけでもありません。だから「何をまず変えれば変化の歯車が動き出すのか」「現実的にどうすれば変わるのか」が分からないのです。
自分の部屋なら、ボタンの場所は最初から分かっています。しかし、初めて泊まるホテルだと、電気のスイッチを探すこともよくあります。他人の家に行った時も同じです。廊下のスイッチが見つからなくて、その部屋の居住者に聞いて初めて「ああ、こんなところに」となります。自分の専門領域外でボタンを見つけるのは結構、大変なのです。
でも、ボタンはあるんです。だからこそ、電気はついているわけですから。そして、その分野で働いている人にはボタンの場所は分かっています。けれど、彼らが動かない限り、外部者にはボタンのありかはなかなか見えません。
多くの場合、内部者はボタンの位置を外部者に教えないどころか、それを隠そうとさえします。なぜなら彼らこそ状況を変えたくない張本人だからです。
私たちは「何が正しいのか、何がおかしいのか」だけではなく、「どうすればそれが実現できるのか」に焦点をあてて考え始めなければなりません。ボタンを見つけ、それを押さないと、現実は何も変わらないのです。
そんじゃーね
著者プロフィール:ちきりん
兵庫県出身。バブル最盛期に証券会社で働く。米国の大学院への留学を経て外資系企業に勤務。2010年秋に退職し“働かない人生”を謳歌中。崩壊前のソビエト連邦など、これまでに約50カ国を旅している。2005年春から“おちゃらけ社会派”と称してブログを開始。著書に『ゆるく考えよう 人生を100倍ラクにする思考法』がある。Twitterアカウントは「@InsideCHIKIRIN」
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