コラム
“被災者はかわいそう”と思う心理:吉田典史の時事日想(3/3 ページ)
東日本大震災が発生してから、2カ月が経過した。この間、多くのメディアは被災地で途方に暮れる人たちを報じてきたが、“かわいそう”なのは被災者だけなのだろうか。困っている人を助けたくなる心理に迫った。
支援する仕組み
碓井さんは言う。「誰もが、初めの1歩をなかなか踏み出せない。だが、今回は被災地に支援に行く仕組みが比較的整っているために心理的な抵抗があまりない。少なくとも児童相談所や犯罪被害者のところへ行くよりは、心理的なハードルは低いのではないか。
震災の復旧・復興支援は、イベントのようになりつつある。例えば、日本テレビで夏に放送される『24時間テレビ 愛は地球を救う』の仕掛けに似ている。まず、こんなに困っている人がたくさんいると放送する。その次に24時間走り続けたり、徹夜で司会をする芸能人が現れる。こういう状況を観た人は感化され、寄付するという仕組みである。
震災以降のこの2カ月を振り返ると、初めに被災地の悲惨な状況が大量に流された。その後で、懸命にがんばる自衛隊や消防団などの姿が報じられた。それに感動した人が自分も何かができる、と思い込む。そして、『日本はひとつ』というスローガンが使われ始めた。すると、支援が始まる。これらは多くの人を動員するイベントとしては、見事に成立している。児童相談所や犯罪被害者への支援はここまで仕掛けができていないのではないか」
被災者への支援は当然だろう。しかし、世の中にはどうあがいても、苦しみのどん底から抜け出せない人がいる。メディアに踊らされることなく、「優しさ」は公平でありたい。
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