コラム
元朝日の高成田氏に聞く、なぜ震災で親を亡くした子供を助けるのか:相場英雄の時事日想(4/4 ページ)
東日本大震災が発生し、東北沿岸地域を中心に親を亡くした子供がたくさんいる。朝日新聞の前石巻支局長の高成田享氏は基金を立ち上げ、親を亡くした子供たちへの支援に乗り出した。基金設立のきっかけなど、高成田氏に話をうかがった。
インタビューを終えて
当コラムで何度か触れてきたが、石巻市を舞台にした拙著の取材を通じ、筆者は高成田氏と知り合った。経済記者として同氏は雲の上の存在であり、かつ、朝日の社説を書いていた人と気楽に話ができる機会など1回もないと考えていた。
実際に会ってみると高成田氏は非常に気さくな人物であり、『ニュースステーション』出演時にお馴染みだった笑顔を絶やさない方だった。だが、今回の震災を経て何度か面会するたび、同氏の目付きが格段に厳しくなる機会が増えた。被災者が置かれた苛烈な状況、あるいは行政の対応の遅れに話が進むと、特に目付きが厳しくなる。眼差しは現役の新聞記者そのものだ。
筆者は通信社記者を経て、現在は作家とフリーのジャーナリストという二足の草鞋(わらじ)で活動している。何度か被災地に入り、大手メディアが報じない細かな事柄を伝えてきた。だが、あくまでも伝えただけなのだ。言い換えれば、被災者にとってみれば他人事の領域を出ていない。
しかし高成田氏は基金設立という一歩を踏み出した。ジャーナリストという枠を飛び出し、当事者になったのだ。
記者という稼業は、取材して記事を書くことしかできない。一般のビジネスパーソンならば当たり前に持ち合わせている経理や法務の知識はほとんどない。しかし、高成田氏はあえて当事者になった。筆者は今後も同基金と同氏の活動を追っていく。
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