東京電力社長の「土下座」は何を意味するのか:吉田典史の時事日想(3/3 ページ)
東京電力の清水正孝社長は福島県内の避難所を訪れ、住民らに土下座をして謝った。日本では責任問題が生じたとき、わびることで誠意を示すことが多い。しかし社長のわびる姿は、裁判で不利にならないように“証拠”を残していたのではないだろうか。
責任をとる3つのパターン
岩田氏は日本企業で責任を取らざるを得ない状況になったときには、次に挙げたような3つの引責行動のタイプがあると指摘する。
(1)責任を割り振ることで、「打撃均衡」の意識が働く
(2)責任ある地位の者がスケープゴートになる
(3)総ざんげ
今回の東京電力の謝罪は、(1)〜(3)まですべてに該当している。(1)と(2)はすでに説明をした通りだが、社長をはじめ首脳陣の中で責任が言わば分配されて、皆で土下座をした。その意味では、このメンバーは受けた打撃は等しくなっている。そして、会社を守るためにいわば“いけにえ”になったと見ることもできる。
さらに総ざんげも行われた。報道によると、東京電力は当初、常務取締役以上の役員の総報酬を半減し、管理職年俸を約25%、一般従業員年収を約20%、それぞれ減額すると発表していた。この額について「少ない」という批判の世論があり、その後、社長、会長ら代表取締役8人が全額返上することを決定した。私はこれでも不十分で、社員(非管理職含む)の給与に大胆にメスを入れるべきだと思う。ただ、現時点で一応は全社員がおわびをしたと見ることはできる。
岩田氏は、東京電力の未来を占うかのようなことを書いている。
「“責任ある地位”にあるものは、ときに思わぬ責任をとらされる破目になる。しかし、この場合、彼が真に“責められるべき”当事者であるとは誰も考えていない。むしろ、部下の失敗に対して“いさぎよく”責任をとることによって、かえって人望が高まる場合さえみられ、一定期間後に、しかるべき地位に復帰することも稀ではない。」(108ページより抜粋)
報道によると、社長は原発事故の責任を取って辞任するという。そして無報酬の顧問になるようだ。これでは、どこかのタイミングで一定の報酬を得るようになる可能性がある。いずれ、会長や役員らも辞めていくだろうが、彼らがこのまま居座ることは断じてあってはならない。
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