さすがにこれは見過ごせない――民主党のありえない話:藤田正美の時事日想(2/2 ページ)
民主党政権は発足当初から、いろいろおかしなことがあった。あまりにもたくさんあるので、いまさら「変だ!」と訴えても野暮かもしれないが、今回の原発事故を巡ってさすがに見過ごせないドタバタ劇があった。それは……。
民主党の透明性
ひるがえって日本の現状はどうだろう。官邸内の首相の発言やミーティングなどが、すべて録音されているというような話は聞いたことがない。菅首相が間違い電話をかけたという記事を見たこともあるが、およそ首相が自分で電話をかけるということがあるのだろうか。本来、電話をかけた相手、会話の内容なども官邸が承知をしていなければ物事が円滑に進むまい。最高権力者にとって「私的な会話」というものはほとんど存在しない。
福島第1原発の事故発生から、官邸にどのような報告がどこから上がっていたのか、誰がいつどんな議論をしたのか、そしてどのような決断がなされたのか。いかに非常時であっても(あるいは非常時であればあるほど)こうした記録がなければおかしいのである。記録がもしあるのなら、それを事故調査・検証委員会に提出することが必要だ。それは「犯人探し」をするためではなく、どのように対応したかをまさに検証し、後世に生かさなければならないからだ。それこそ菅総理の好きな「歴史の評価」である。
もう1つ民主党の好きな言葉で言えば、透明性の確保ということでもある。民間人だったら許される程度の「私的な会話」も、いったん総理官邸という最高権力者の公的な場に入ったら、当然、記録の対象になっておかしくはあるまい。菅総理に自覚があるかないかは知らないが、総理大臣は自衛隊の最高司令官でもある。仙谷元官房長官が言っていた「暴力装置」を自分の意思によって動かすことができる(実際、10万人の自衛官を災害派遣することを最終的に決めたのも、ヘリで原子炉に水をかけるという危険だが効率の悪い作戦を決めたのも首相である)。「誰が決めるか」も重要だが、とりわけ必要なのは、どのような議論の末に決めたかだと思う。
原子炉事故が発生し、3基の原子炉で史上最悪とも言えるメルトダウンがほぼ同時期に進行しているときに、官邸が何を承知していて、どういった議論に基づいて何を決めたか。事故調査・検証委員会がありとあらゆる情報や資料をまとめて報告したときに、果たして菅政権はその「総括」に耐えられる仕事をしたのかどうかが明らかになる。
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