「原発に未来? ない」――蓮池透が語る、原発労働の実態(後編)(3/3 ページ)
北朝鮮による拉致問題で、被害者家族として活動した蓮池透さん。かつて東京電力、しかも福島第1原発で働いた経験を持つ蓮池さんは、今回の大惨事をどのように見ているのだろうか。
原発内での作業員が心配だ
原発内で作業員が被ばくしているが、とても心配だ。今回の事故で、被ばく線量限度の250ミリシーベルトを超えた作業員も出ている。内部被ばくというのは、ものすごく恐ろしいもの。原発作業員は「タイベック」という白色のつなぎを着ていればアルファ線やベータ線を防ぐことはできるが、内部被ばくをしてしまうとアルファ線、ベータ線、ガンマ線すべてをあびることになってしまう。
福島第1原発では現在、内部被ばくのチェックをしていないだろう。なぜなら内部被ばくを計測できるホールボディカウンターがある建物が、津波でやられていると思うから。もし津波でやられていなくても、ホールボディカウンターという機械はとても敏感で、周囲の放射線量の数値が高ければうまく動かない。今、原発周辺の放射線量はとても高いので、ホールボディカウンターは使えない状態になっているはずだ。
東電は、ホールボディカウンターで計測した数値を公表しようとしていない。原発で働いている作業員は、できるだけ早くホールボディカウンターで内部被ばくをチェックすべきだ。東電に「内部被ばくの数値を公表せよ」と言っても「これは個人情報にひっかかるので……」といった話になるかもしれない。しかし、この数値は公表すべきだ。
政府はけしからん
政府は、年間許容被ばく量を20ミリシーベルトに設定したが、これには「けしからん」と思った。何を根拠にかというと、文部科学省は国際放射線防護委員会(ICRP)※の声明をもとにしたという。最近になって「目標を1ミリシーベルトにする」と発表したが、大人、女性、子ども……みんなが20ミリシーベルトというのは、やはりおかしい。
国や自治体による放射線量の発表は、信頼できない。自分で線量計を購入し、子どもたちが遊んでいる公園などを計測する人が増えてきているようだ。福島市や飯舘村などに行った人に聞いたところ「国が発表している数値よりも、放射線量は3倍ほど高い」と言っていた。赤ちゃん、子どもが心配だ。政府はできるだけ早く、避難を含めて検討すべきだろう。
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