欧州を震撼させている、O104の猛威:松田雅央の時事日想(3/3 ページ)
北ドイツを中心に新型の病原性大腸菌O104が猛威を振るっている。感染者は3500人、死者は39人。感染源も北ドイツで生産されたモヤシと特定されたが、事態が収束するのはまだまだ先のようだ。
感染源
6月に入り、「ニーダーザクセン州(ドイツ)の農場で栽培されたモヤシに感染源の疑いがある」と報道され、10日になり衛生当局も感染源の可能性が高いと発表した(断定ではない)。これまで生食を控えるよう呼びかけていたキュウリ、トマト、葉物野菜については安全宣言が出されている。
O104は加熱に弱いので調理すれば心配ないが、欧州では細い種類の生モヤシをサラダとして食べる習慣があり、それが災いしたようだ。しかしながら、感染源の特定になぜ1カ月近くも要したのだろう。
まず、O104の潜伏期間が比較的長く原因となった食品を特定するのが難しかったという理由が1つ。健常者でも10日前に食べたものを問われれば、なかなか明確な答えは返せない。生ゴミはすでに収集された後だから決定的証拠を押さえることが困難だし、EHEC/HUSは症状が進むと意識に障害が出るから聞き取り調査も難しくなる。
さらに、政府の対応の遅れも指摘されている。過去の教訓を基に、全国の情報を衛生当局が一元管理することになっているが、それが必ずしも機能しなかった。あるいは政府が事態の深刻さを認識するのが遅すぎ、初動の遅れを招いたとの指摘だ。今後、すべての面で対応策は改善されるはずだが、大きな被害を経験しないと対策は本当の意味で進歩しないということだろうか。
そんなことを考えていたら、ふと東京電力福島第1原発での事故が頭に浮かんだ。
福島第1原発事故に関する日本政府の対応の遅さを指摘するドイツ人は多いが、対応の遅れ、さらには誤った判断による風評被害の発生など、今回のEHEC/HUS災禍ではドイツ政府に不手際が目立つ。両問題を並べて語るのはみそくそ一緒の無茶な比較だが、想定外の事態が起きた時の政府の対応には限界があると、つくづく思った次第である。
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