「東電とケンカをしても無駄。なぜなら……」――新潟県三条市の市長に聞く:相場英雄の時事日想(4/4 ページ)
福島県南相馬市からの被災者を受け入れた、新潟県の三条市。震災後の政府や官僚の対応について、國定勇人(くにさだ・いさと)市長はどのように見ているのか。また避難生活の原因を作った東京電力について、率直な意見を聞いた。
インタビューを終えて
2006年、故郷の市長に中央官庁出身のエリート官僚が就いたと報道で知った。筆者は「まさか」と思った。他の田舎町と同様に三条市は極めて保守的な土地であり、他所から来た人に市政を任せるような革新的な風土ではないと地元出身者として皮膚感覚で理解していたからだ。
このため、今回のインタビューでは、震災対応というテーマのほかに、市長自身がどのような人物か興味津々で臨んだ。筆者は市長より年長であり、魑魅魍魎(ちみもうりょう)が跋扈(ばっこ)する経済界で長年取材してきた。演出されたキャラクターを見破るスキルは人一倍あると自負してきた。
またここ数年、異色の経歴やタレントとしての知名度を生かして地方の首長に就任する向きが増加中でもあり、國定氏も同じくくりの中にいる人物ではないのか。秘かに筆者はそんなイメージを抱いてきた。
だが、話を聞くうち、筆者が抱いていた事前のイメージはすぐに消えた。なぜなら、國定氏が「どっちを向いて仕事をしているのか」という言葉を発したからだ。同氏は中央官庁から出向していた際に同市の水害に遭遇し、被災した。その際、先に触れた「どっちを向いて?」という行政が持つサービス機能の本質を体得したのではないか。
同氏はあえて嫌われ役を買って出て、東電や国会議員に対する被災者の心情を代弁した。インタビュー開始当初、市長の物腰は柔らかかった。しかし、次第に国会の混乱や東電に話が及ぶにつれて顔が紅潮し、語気も強くなった。本気で怒っていることがヒシヒシと伝わってきた。
わずかな時間だったが、市長の意気込みは本物だと理解できた。今後も東電や国との折衝で、同氏が顔を真っ赤にして怒る機会があるはずだ。ただ、それは被災者のためであり、市民のためなのだ。「こっちを向いてくれている」という姿勢は、被災者や市民に確実に伝わるはずだ。
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