地中熱システムで、空調22度でも15%節電を――リチャード・A・ゴードンさん:嶋田淑之の「リーダーは眠らない」(4/4 ページ)
政府からの東京電力・東北電力管内での「ピーク時15%節電」要請により、“我慢の節電”を強いられている企業が多い。そんな中、省エネルギーコンサルタントのリチャード・A・ゴードンさんは「“我慢”をせずとも節電できる地中熱利用ヒートポンプシステムに注目するべき」と訴えている。
日本の人々のために――リチャードさんの新たな挑戦
リチャードさんは日本からの帰国後、2つの新しいプロジェクトに取り組んでいる。
1つ目は米国ルイジアナ州の米陸軍基地で総数4500棟の建屋に地中熱利用ヒートポンプシステムを導入するというプロジェクトだ。リチャードさんがトータルデザインを担当するが、世界中の事例を見渡しても4500棟同時導入というケースは存在せず、完成すれば世界最大の地中熱利用ヒートポンプシステムとなるだろう。
2つ目は東北地方の震災復興で、多くの建築物がゼロベースで再建されるのにあわせて、地中熱利用ヒートポンプシステムを積極導入していくプランである。東北の被災地復興支援の米国使節団の一員として来日し(5月末〜6月上旬)、現地の状況をつぶさに観察した成果と言うべきであろうか。
地中熱利用ヒートポンプシステムは冷暖房のみならず、冬場の路面融雪にも大きな力を発揮するので、東北地方の気象特性に適合したシステムと言える。このプランを具現化するために、リチャードさんは日本の関係筋とも調整を進めつつあるようだ。
このプロジェクトは未曾有の大震災からの復興のためであり、日本の政府も自治体も産業界も、今こそ前時代的な人間観や労働観から自由になって、世界の趨勢を客観的に見すえ、惜しみない協力をしていただきたいものである。地中熱利用ヒートポンプシステムについての専門技術的なご意見・お問い合わせがある場合は、リチャードさん「ragordon@gai-en.com」までご連絡いただければと思う。
私個人としても、リチャードさんの今回の貢献が日本人の意識を変え、生活を変える1つの契機となることを強く願っている。その思いは、リチャードさんも同じだろう。リチャードさんのこの新たな挑戦の成功を祈らずにはいられない。
嶋田淑之(しまだ ひでゆき)
1956年福岡県生まれ、東京大学文学部卒。大手電機メーカー、経営コンサルティング会社勤務を経て、現在は自由が丘産能短大・講師、文筆家、戦略経営協会・理事・事務局長。企業の「経営革新」、ビジネスパーソンの「自己革新」を主要なテーマに、戦略経営の視点から、フジサンケイビジネスアイ、毎日コミュニケーションズなどに連載記事を執筆中。主要著書として、「Google なぜグーグルは創業6年で世界企業になったのか」、「43の図表でわかる戦略経営」、「ヤマハ発動機の経営革新」などがある。趣味は、クラシック音楽、美術、スキー、ハワイぶらぶら旅など。
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