コラム
必ずやって来る“国債大津波”を、政府は想定しているのか:藤田正美の時事日想(3/3 ページ)
税と社会保障の一体改革案がまとまった。菅首相は「歴史的決定だ」と言うが、内容は不十分だ。例えば消費税を上げる時期が不明確であったり、社会保障の問題も詰め切れていない。こうした背景には政治家の危機感が欠如しているからではないだろうか。
その難しい状況(それこそ日本が直面したことのない危機、じわじわとくる「国難」だ)の中で、財政を再建し、何とか社会保障を持続可能なものにしなければならないのである。政府与党が決定した社会保障の見通しの中でも、いわゆる給付水準の引き下げにはまったく触れられていない(そんなことをすれば次期国政選挙で不利になるからだ)。税と社会保障の一体改革という日本経済の根幹に関わる問題を、消費税と社会保障を結びつけるという問題に矮小化(わいしょうか)してしまった。その意味では将来へのビジョンを欠いた改革案であり、それを具体化していく段階で、早晩つじつまが合わなくなってくるはずだ。
そしてつじつまが合わなくなったときには、大きな社会的混乱が起きる可能性もある。その時に慌てても、地震対策や津波対策と同様、間に合わないのである。原発のような分かりやすい話ではハッスルする首相だが、いつか来る“国債大津波”にはまったく無頓着に見える。日本から脱出できる富裕層はいいが、大多数の国民は日本にとどまらざるをえない。自分の延命ではなく、そうしたことに心を砕いてこそ政治家である。
関連記事
- なぜ信用できないのか? 政府が発表する原発情報に
原発事故を受け、日本全体が揺れている。国民の多くは「政府の言っていることが信用できない」と不信感を抱いているが、なぜこのような事態に陥ったのか。この問題について、原口一博議員と武田邦彦教授が語り合った。 - 菅首相、お辞めなさい
永田町で繰り広げられた“茶番劇”を見て、改めてこの国の政治家にガッカリした人も多いのではないだろうか。菅首相は被災者を「人質」にし、「歴史の評価に耐えられるのか」などと野党を恫喝しているが、その姿は指導者として恥ずかしい。 - さすがにこれは見過ごせない――民主党のありえない話
民主党政権は発足当初から、いろいろおかしなことがあった。あまりにもたくさんあるので、いまさら「変だ!」と訴えても野暮かもしれないが、今回の原発事故を巡ってさすがに見過ごせないドタバタ劇があった。それは……。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.