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メディアが生き残る、キーワードは“主観”相場英雄の時事日想(2/3 ページ)

大手メディアには「編集委員」「解説委員」といった肩書きを持つ記者が存在する。取材現場の第一線を退いたベテランが多いが、このシニア記者を積極的に活用してみてはいかがだろうか。

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 この企画では、1カ月という期間を区切り、ベテラン記者がさまざまな人と会い、地元固有の問題に直面し、地元民とともに知恵を絞っている姿が克明に記録されている。

 霞が関や大手町の情報を中央からの“上から目線”で届けてきた日経だからこそ、この「住んでみるシリーズ」の地元目線が際立つと筆者は勝手に解釈している。もちろん、同紙地方拠点にはたくさんの記者が配置されている。ただ、彼らは他の中央紙や地元紙との競争に直面している上に若手記者が大半を占める。じっくりとルポを綴る暇はない。

 一方、「住んでみるシリーズ」を担当するのは、長年の取材経験を経て酸いも甘いも噛み分けてきた人材だ。生意気なことを言わせていただけば、味のある文章で、かつ鋭い分析で地方の問題点や地元民の生活を炙り出しているのだ。

 この連載を読むために、筆者は同紙の購読を続けていると言っても過言ではない。

 日経の他にも、同様の企画があった。2008年から2010年まで朝日新聞の宮城・福島版で連載された「話のさかな」もベテラン記者たちが担当した秀逸な企画だ。

 当コラムでも登場した高成田享・前朝日新聞石巻支局長(関連記事)と同紙の三陸各地支局のベテラン組が魚をテーマに長期の連載を受け持ったのだ。現地で水揚げされるさまざまな魚介類について、漁師や水産加工業者とのエピソード、あるいは水産業の問題点を交えながら記したものだ(「話のさかな/高成田享と三陸おさかな探検隊:荒蝦夷」)。

 日経と朝日の企画に共通するのは、どちらもベテラン記者が書いたという要素のほか、記者の主観が前面に出ている点だ。

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