避難所の閉鎖、仮設住宅暮らし――震災から3カ月、相馬市と旭市の今:東日本大震災ルポ・被災地を歩く(5/5 ページ)
時間が経つにつれて、被災地の住宅事情も変化している。仮設住宅が建ち、避難所が閉鎖し……という中で、そこに暮らす人々は何を思うのか。福島県相馬市、千葉県旭市の今を取材した。
「自立」とともに「孤立」も進む
避難所生活から仮設住宅に移ったり、自宅に戻ったり、時間が経つにつれて被災者の生活パターンはさまざまになっていく。
こうした状況は、「自立」の意味ではよいかもしれない。しかし、逆に「孤立」を生むこともある。その孤立を防ぐために、市では戸別訪問を実施して、健康チェックをしている。また、仮設住宅に住んでいる人を対象に健康相談会をすでに2回実施した。
市の健康管理課では、栄養や運動の不足に対する指導を含めた健康相談を行っている。65歳以上の住民には「高齢者福祉課」が対応、65歳未満の住民は健康管理課が対応する。とはいえ、実際には高齢者福祉課と連携をしているので、一定の把握はしている。
「ストレス症状を訴えた人は、避難所のときはいましたが、現在は、旭中央病院の『心のケアチーム』も戸別訪問をしているので、フォローアップに努めています。心の問題は外傷とは違って目に見えにくい。3カ月経って落ち着いていますが、(心のケアは)むしろこれからの問題。継続していきたい」(保健師)
日常的な生活支援については「必要があれば、民生委員を通じて対応することになっています。目標は、元の生活に戻せるか、です」(同)と話している。
ただ、ある民生委員は「被災者には説明できない思いが数々ある」と悩む胸の内を明かす。「私は家は流れていないが、流れてしまった人もいて、これから先どのように仮設住宅を訪問したらいいのか分からない。だから、まだ私は1回も訪問していない。積極的に動いていいのか。それが余計な口出しになってはいけないから、消極的に待っていたほうがいいのか……行政でも決め手がないものを、私たちにも分からない」
仮設住宅はプライベート空間だ。避難所とは全く違う。震災によって生活の支障をきたしても、部屋に入っていれば、隠すこともできる。隠すには隠すだけの理由がある。一人暮らし世帯であればなおさらだ。民生委員も重要な役割を果たす部分はあるが、まずは保健師らの専門職のチームが問題に気づき、必要であれば民生委員につなげるのも1つのアイデアだ。災害による孤独死は最も避けたいことだが、仮設住宅になった今、支援と自立の狭間で揺れている。
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渋井哲也(しぶい・てつや)氏のプロフィール
1969年、栃木県生まれ。フリーライター、ノンフィクション作家。主な取材領域は、生きづらさ、自傷、自殺、援助交際、家出、インターネット・コミュニケーション、少年事件、ネット犯罪など。メール( hampen1017@gmail.com )を通じての相談も受け付けている。
著書に『自殺を防ぐためのいくつかの手がかり』(河出書房新社)、『実録・闇サイト事件簿』(幻冬舎)、『解決!学校クレーム』(河出書房新社)、『学校裏サイト 進化するネットいじめ』(晋遊舎)、『明日、自殺しませんか?』(幻冬舎)、『若者たちはなぜ自殺するのか?』(長崎出版)など。メールマガジン 「悩み、もがき。それでも...」を刊行中。
5月、被災地の人々の生の声を集めた『3.11 絆のメッセージ』(被災地復興支援プロジェクト)を出版した。
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