“憧れの企業”に就職してはいけないワケ:メディアとWebと人材と(2/2 ページ)
毎年各社が発表する就職希望企業人気ランキング。しかし、筆者はそのランキングは自分が働きたい企業ではなく、好きな企業が上位に入っているのではないかと主張。憧れの企業に入ることの危険性について解説します。
笑い話では済まされない“アラサー前の自分探し症候群”
ここまでは良くある笑い話(?)ですが、実は私にとっては笑えない理由が2つあります。先に書きやすい話から始めると、実は30歳が視野に入ってきた20代後半の方が、同じような理由で転職を考えるケースが、どうにも目に付いてしまうからです。
例えば、高学歴で良い会社に入り、しっかりと実績も残している人が、突然「自己実現のためにWebデザイナーになりたい」と言い出す。あるいは同じように20代後半になって、突然「芸能プロダクションでマネージャーをやりたい」と言う人もいるんです。
「自己実現のためにWebデザイナー」と言いますが、いくつか問題点が。
まず第1に、30近くにもなってまったくの未経験者を採用してくれる企業は(ゼロじゃないですが)多くありません。また、仮に採用されても新卒並の給与になることは覚悟しておいてください。
そして2点目の問題。「自己実現でWebデザイナー」と言いますが、Webデザイナーの仕事をご存じですか? アーティスティックなデザインをする人は(よほどの天才クラスでない限り)評価されず、ユーザビリティに優れた使い勝手の良いデザインをする人が評価を受けやすい世界です。
あるいは仕事内容に目を向ければ、マークアップエンジニア寄りの仕事、つまりデザインよりもコーディングで時間が取られる人もいれば、会社によってはWebディレクターのような仕事まで担当している人もいる。それで本当にあなたの考えている「自己実現」はできますか? 趣味でWebサイトを作るのではダメなんですか?
同じように芸能プロダクションのマネージャーを考える人へ。本当にマネージャーの仕事のことを理解してますか?(以下、略)
実は私も仕事のことがよく分かってなかった
と、偉そうなことを書いてきましたが、実は自分自身も仕事のことを分かってなかった、という強烈な自己反省があります。
私は学生時代、ある会社にアルバイトで入り、エンタメ系の情報サイトを作っていました。コンテンツを考え、Webサイトを作り、まぐまぐなどのメールマガジン発行システムを使い、プレゼントキャンペーンで読者を増やし――といった活動の中で、私が熱中していたのは「会員を増やすための仕組み作り」。
どんなコンテンツを書くか、記事の質をいかに上げるか、ということを考えるよりも、「●曜日の●時にメルマガを出すと、まぐまぐで上位に入る」「プレゼントは○○と××で告知すると一気に会員が増える」という仕組みを考え、それを自分の手で実行し、その結果を見て一喜一憂する。そんな体験が好きでしたし、会員数もわずかながらですが増えていました。自分の手でPDCAサイクルを回して成果を出す。その仕事の進め方にハマっていったのです。
というわけで、就職先の1つとして考えたのは、Webメディアを作っている会社。幸運にも望み通りの職場に入れましたが、結局2年半で退職することに。結局、退職の最大の理由は、自分のやりたい仕事が「Webプロデューサー」やら「Webマーケティング」やらだったはずなのに、それが分かってなかったんです。もっと早くそのことに気付けていれば、迷惑を掛けずに済んだのに、と反省しているのです。
これから就職活動を迎える学生には、同じような反省をしてほしくないですし、20代の方ならまだ取り返しがつきます。くれぐれも自分が好きな“憧れの企業”へ安易に就職しようとするのではなく、本当に自分がやりたいことについて考えてみてください。(中嶋嘉祐)
※この記事は、誠ブログ「"憧れの企業"に憧れて就職してはいけないワケ」より転載しています。
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