円高が進むほど業績悪化――上場メーカーの半数、1ドル=80円を想定:進む円高に追いつかず
米国政府の債務をめぐる問題から、為替市場では1ドル=77円50銭台まで円が急伸している。輸出企業にとって円高は収益悪化要因となるが、上場メーカーの半数は想定為替レートを1ドル=80円に設定しているようだ。東京商工リサーチ調べ。
米国政府の累積債務の法定上限14兆3000億ドルの引き上げをめぐる与野党協議の先が見えないことから、為替市場ではドル安が加速。7月27日の東京外国為替市場では1ドル=77円50銭台まで円が急伸し、東日本大震災直後の3月17日に記録した76円25銭の史上最高値に迫っている。
東京商工リサーチの調査によると、東証1部・2部上場の主要メーカー121社のうち、本田技研工業など約半数に当たる60社が2012年3月期決算の想定為替レートを1ドル=80円に設定していることが分かった。1ドル=83円が21社(パナソニックなど)、1ドル=85円が17社(東芝など)、1ドル=82円が14社(トヨタ自動車など)で続き、1ドル=80円より円高の水準に設定している企業はなかった。
2011年3月期決算では121社中101社が想定為替レートを1ドル=90円に設定。震災後の為替市場の動きを受けて、多くの企業では想定レートを大幅に円高の水準へと変更したが、それ以上の市況となっているようだ。
東京商工リサーチでは「輸出依存度の高い日本にとって、想定レートを超える円高が進むと企業収益の悪化から、産業の空洞化という深刻な事態が本格化することも懸念される。円高は輸入関連にはメリットもあるが、海外からの安価な商品の流入は、デフレと低価格に翻弄される中小企業に一層の価格引き下げを強いる」とコメントしている。
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