ユーロが患う3つの病と、3つの処方せん:藤田正美の時事日想(3/3 ページ)
ユーロの存続を危ぶむ声が出ている。ギリシャ、アイルランド、ポルトガルといった国が債務危機に陥っているが、ユーロを維持するメリットはあるのだろうか。今回の時事日想はユーロ解体賛成論者の意見を紹介する。
ジョージ・ソロスのプランB
ギリシャのデフォルト(債務不履行)か、ギリシャがユーロ圏から離れる。これはリスクが高すぎるかもしれない。こうしたことが言われたとたんに、アテネ、リスボンやがてマドリッドやローマでも、人々は銀行から預金を引き上げようとするだろう。
プランC
オーストリア、フィンランド、ドイツ、オランダがユーロから抜けて新しい統一通貨をつくる。慎重に計画して実行すれば、これがユーロに残った国も助けることにつながる可能性がある。ユーロが値下がりし、それらの国の競争力が高まるからだ。もちろん新通貨に移行した北の諸国の競争力は落ちるかもしれないが、インフレの懸念から解放され、南の諸国の面倒をみなくてもよくなる。そして現在ユーロに加盟していない国の一部もこの新しい通貨に加盟するかもしれない。
このプランCを実現するためには、前述した3つの病気にそれぞれ対処する必要がある。政治的にも現実的にもハードルが高い。そしてメルケル首相の勇気が何よりも必要である。
欧州の動きから目が離せない
以上がヘンケル教授の主な論点だが、これを見ても主権国家が共通通貨をもつことの難しさがよく分かると思う。1999年1月からスタートした統一通貨ユーロが、十数年という短い歴を終えてしまうのかどうか、欧州の動きから目が離せない。
一方、わが国の政治家は、日本の債務は日本だけの問題であるかのように考えているが、実際には欧州の台風がもたらす大きなうねりは、市場という海を伝わって必ずやってくる。その時に「私はうとい」などと言う首相がその座にいないことを切に願うばかりである。
関連記事
- さすがにこれは見過ごせない――民主党のありえない話
民主党政権は発足当初から、いろいろおかしなことがあった。あまりにもたくさんあるので、いまさら「変だ!」と訴えても野暮かもしれないが、今回の原発事故を巡ってさすがに見過ごせないドタバタ劇があった。それは……。 - 不思議の国ニッポンが、好かれる理由
ドイツ人は日本に対し、どのようなイメージを抱いているのだろうか。伝統文化を重んじる一方で、先端技術を誇るハイテクの国。また最近ではサブカルチャーの発信地としても注目を集めているようだ。 - 欧州、米国、日本……財政危機の不安が消えない
財政危機に陥っているギリシャであるが、7月21日に開かれたEU緊急サミットで支援の形がまとまった。予想より大きな支援だったのでホッと一息ついた国も多いだろうが、ユーロ危機はこれで解決できたわけではない。その理由は……。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.