メガソーラー時代がやって来る!:松田雅央の時事日想(3/3 ページ)
原発事故後、将来の主力電源としてソーラー発電が注目されている。ソーラー発電にすると「電気代が高くなる」「電気を安定供給できない」といった声があるが、本当にそうなのだろうか。欧州のソーラー発電事業に迫った。
将来は北アフリカの砂漠に
費用対効果をさらに追求すると、当然、ドイツではなくもっと日照エネルギーの豊富な地域や国に建設するのが有利となる。ドイツの資金と技術を用いたメガソーラーがすでにスペインで稼働を始めており、将来は地中海を越えた北アフリカで発電し欧州へ送電することになりそうだ。
砂漠のような場所に建てる場合、発電効率と建設費用のバランスから太陽電池よりソーラー熱発電が有望となる。ドイツ政府の援助を受けソーラー・ミレニウム社が統括するスペイン南部のメガソーラープロジェクト「アンダソル 1-3(Andasol1-3)」は2011年中にフル稼働を始める予定だ。
敷地面積は195ha、パラボラミラー面積は100ha、年間発電量は9.6万世帯の年間使用量に相当し、CO2削減効果は年間45万トン。小さな都市の電力需要をまかなう規模である。
パラボラミラーで循環する液体を400度まで加熱し、蓄熱剤(硝酸ナトリウム〈NaNO3 60%〉+硝酸カリウム〈KNO3 40%〉)を満たした蓄熱タンクに熱を貯める(この温度だと蓄熱剤は液体)。この熱を使い蒸気タービンを回して発電し、発電効率は最大で28%、年間平均で15%に達する。
太陽電池を用いるソーラー発電と比較した利点は、第1に建設費が安く、設備の寿命が長いこと。さらに魅力的なのはソーラーエネルギーを熱として蓄えるため、夜間でも発電可能なこと。冬場の発電量は少なくなるが、ソーラー発電の弱点である天候や時間帯による発電量の変動を克服できる。
さらに北アフリカ、モロッコの砂漠ではドイツの出資による初の実験プロジェクトが稼働中だ。ドイツ環境省の予測によれば2050年には欧州の電力の約15%が北アフリカから供給されることになる。そうなれば北アフリカ諸国は電力収入を得、欧州は割安な電力を使える。うまくすれば両者が得をするWin−Winの関係を築くことができるだろう。
電力需要の大きな部分をソーラー発電に頼ることを不安視する人もいるが、エネルギーを蓄える仕組みはさまざまあり、技術開発が猛スピードで進められている。問題はどの国や地域が真っ先にそれを完成させ、世界の主導権を握るか。開発は日本国内でも国外でもいい。日本はここで手をこまねき、エコビジネスのチャンスを逃すようなことがあってはならない。
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場所 | スペイン南部 |
敷地面積 | 195ha |
パラボラミラー面積 | 1,000.000平方 |
パラボラミラー枚数 | 約41万枚 |
年間発電量 | 約335GWh |
ソーラー→熱 | 最大70%、平均50% |
熱→電力 | 最大40%、平均30% |
全体 | 最大28%、平均15% |
循環する液体の温度 | 最高400度 |
蓄熱剤 | NaNO3 60%+KNO3 40% |
CO2削減効果 | 約45万トン/年 |
稼働開始 | 2011年稼働予定 |
想定稼働年数 | 40年以上 |
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