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インタビュー

“堅苦しい話題”こそ柔らかく――「セキュリティ」キュレーター 新倉茂彦突撃! となりの専門家 第3回(2/2 ページ)

PCで世の中が便利になる一方、「攻撃者」にとっても便利な世の中に。脅威に対抗するためにはセキュリティに対する知識が必要だ。情報セキュリティのコンサルティングを行う新倉さんは、ONETOPI「セキュリティ」で“知って得するセキュリティ知識”を発信し続けている。

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実名制SNS時代に求められる情報セキュリティスキルとは

Business Media 誠 FacebookやGoogle+など実名利用を推進するSNSが広がりつつあるいま、ビジネスマンはどのようなことに気をつけるべきでしょうか。

新倉 まず「いったんインターネットに流した情報は消えない」という意識を持つことが大切ですね。何も考えずにつぶやいたことで、関係者や周囲の人間に大きな迷惑が及ぶかもしれません。“ここだけの話”のつもりだった情報が爆発的に広まってしまう可能性もあります。

 自分が見ているのは携帯電話やスマートフォンなどの端末でも、その内容は全世界に発信され、その言動すべてが時系列で簡単に並べることができ、記録が蓄積されていきます。こう考えるようになると、発信する内容もおのずと変わってくるはずです。

Business Media 誠 不用意な発言をしづらくなりますね。

新倉 「何をどこまで発信するのか」という線引きは非常に難しいです。「リスクを避けるには、ソーシャルメディアをやらない」というのも1つの選択肢です。でも、それはそれでつまらないと考えるのであれば、まずは自分なりの情報発信の“モノサシ”をつくりあげる必要があるでしょうね。

Business Media 誠 情報発信の“モノサシ”とは具体的にはどのようなものが考えられますか。

新倉 「自分が発信した情報によって、迷惑がかかる相手がいないか」は重要なポイントの1つですね。例えば、飲み会の写真を撮り「盛り上がってます!」とつぶやいたとします。「イベントを盛り上げよう」という善意の行動だったとしても、写真に撮られた同席者には「他の誘いを断って参加した」という事情があるかもしれないし、疎外感を味わう人もいるかもしれない。

 これからの時期、とくに気をつけたいのは、バーベキューなどで大勢のゲストが集まるようなイベント。子どもや女性の写真を勝手に撮ってネット上にアップしたり、GPS情報付きで個人宅でのイベント写真をつぶやいたり……といった行動はあまりにも無頓着。驚くほど簡単に情報漏えいの加害者にも被害者にもなってしまう可能性があるということは肝に銘じておきたいですね。

Business Media 誠  自分は気をつけているけれど、周囲が情報セキュリティに無関心な場合は、どうしたらいいのでしょうか。

新倉 難しい問題ですね。あれこれ説明しても、おそらく相手は理解してくれないでしょう。「考え過ぎ」と一笑に付されてしまうかもしれません。腹を立てて関係を絶ったところで問題は解決しません。勝手に情報を発信される可能性も依然としてある。であれば、ゆるやかにつながりながら、何か具体的な問題があったときに、冷静に「やめてほしい」と伝えるほうが得策かもしれません。

キュレーターの情報収集・選別術

Business Media 誠 新倉さんは普段、どのように情報収集をしていますか。

新倉 RSSリーダーやGoogleアラートに「セキュリティ」や「情報漏えい」というキーワードを設定しておいて、随時読んでいます。また、はてなブックマークや2ちゃんねるのまとめサイトなどにもざっと目を通し、気になった情報を精査しています。

Business Media 誠 集めた情報を発信するときに心がけていることは?

新倉 「情報セキュリティは堅苦しくて難しい」というイメージを払しょくすべく、なるべく柔らかめの話題を中心に選んでいます。例えば「ボディスキャナー」。テロ防止のために搭乗客の服の内側をスキャンし、不審物をチェックするという機械で、日本でも導入が検討されています。ところが、先日、米国フロリダ州で「ボディスキャナー」を使って撮影した画像がリークされ、ネットを賑わせました。こうしたトピックを積極的にとりあげることで、情報セキュリティにあまり関心がない方々にも興味を持ってもらえればと思っています。

*** 一部省略されたコンテンツがあります。PC版でご覧ください。 ***

ネットとの付き合い方をどう教える?

Business Media 誠 最近では子どもたちがSNSを利用するケースも増えています。家庭での情報セキュリティ教育については、いかがですか。

新倉 私には小学生と中学生の娘がいて、携帯電話各社が提供するフィルタリング機能は使っています。ただ「学校裏サイト」をはじめとする、すべての“危険サイト”をシャットアウトするのは物理的にも無理だし、得策でもないと考えています。むしろ、大切なのは危険なものに出くわしてしまったときの対処法。自分の考えがすべてではないし、10人いれば10通りの考え方がある……といった話をしょっちゅうしては、娘たちにうるさがられています。

Business Media 誠 情報は受け取る側の読み解き方次第で善にも悪にもなりうるということですね。

新倉 情報をうのみにするのではなく、これまでの経験に照らし合わせて咀嚼(そしゃく)する。それができて初めて、集めた情報を自分の武器として使いこなせるようになるんです。「情報セキュリティ」に携わるようになって早10数年が経とうとしていますが、その間にセキュリティシステムは目覚ましい進化を遂げています。でも、利用する人の道徳観が脆弱(ぜいじゃく)だと役に立たないんです。じつは視野を広げ、思考を深く巡らせることが一番の情報セキュリティ対策なのかもしれません。ONETOPIでは、ものの見方や考え方が変わるヒントになるような情報を発信していきたいですね。

ONETOPI「セキュリティ」キュレーター:新倉茂彦(にいくら・しげひこ)

東京都出身。有限会社ティーシーニック代表取締役。イベントコーディネーター、ネットワークセキュリティ会社を経て1999年に独立。情報漏えい対策や情報セキュリティ対策のコンサルティングを手掛ける傍ら、セミナー研修講師としても活躍。東洋哲学とタオ哲学も研究中。お気に入りのONETOPIは「Mac」。いわく「新製品が出るとまずONETOPIをチェックします。スマートフォン向けのアプリができたおかげで、これまでより読みやすくなりそうで期待してます」。

ONETOPI「セキュリティ」:@security_1topi 

Twitter:@niikura 


ONETOPIとは?

「情報通を友達に 知りたいことをシンプルに」をキーワードに、特定のトピックに詳しい「キュレーター」が、広大なネットの情報から重要なものだけをタイムリーにお届けするメディア。2009年からスタートし、現在100を超えるトピックを用意。スマートフォン向けアプリもリリースしています。

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