ブルーオーシャンを探せ! 小さな塾の戦い方とは(2/2 ページ)
多くの業界で市場の寡占化や商品のコモディティ化が進み、競争が激化している。そこでは価格や機能などで血みどろの競争が繰り広げられている。塾業界にはそんな競争から抜け出せるブルーオーシャンは存在するのだろうか。
エデュテイメントを使った小さな塾のブルー・オーシャン戦略
学習塾業界は少子化ゆえに市場規模の縮小のみならず、予備校や通信教育企業などが参入するなど市場のオープン化もあって、大きな変革期に差し掛かっている。今後、レッド・オーシャンに身を沈めないためにも、現在の価値曲線と戦略キャンパスからブルー・オーシャンを見出してみたい。
今回はそのKSFにデジタル教材、特にエデュテイメントと呼ばれる教材を置き、下図に新しい価値曲線を描いてみた。エデュテイメント(Edutainment)とは、教育(Education)と娯楽(Entertainment)を組み合わせた造語であり、楽しく学習するものである。
このエデュテイメントを活用することで、従来の集団指導や個別指導とはまったく違うビジネスモデルの塾となった。「合格実績」「講師の学歴」「保護者対応」を切り捨てるか減らすかした結果、新しい価値である「楽しさ」とともに「新しい生徒層」までも創出でき、新たな戦略キャンパスを描けたのだ。
生まれつきデジタル・ネイティブの子どもたちは、みんな携帯型端末機(アップルのiPadやiPhone、任天堂のDSなど)を器用に扱い、エデュテイメントの学習コンテンツで「いつでも」「どこでも」手軽に勉強することができるのだ。こんな塾(学習の場)があったら、大変面白いと思う。決して既存の考え方では、出てこないアイデアである。
そもそも地域に密着する小さな塾は、引き算で創られるべきだと思う。あれも、これもとシステムを追加していくのではなく、はっきりと捨てるものは捨てて、大事なものを充実させることが重要である。教育というソフトで勝負する塾業界は、規模を求めなければ資本に左右されることなく、地域に根付いた経営が可能である。
この点で、同じような商品しか置けなかった町の酒屋が、コンビニになったケースとは大きく違う。だから小さな塾はアイデア次第では、生き残ることができるのだ。それには地域社会に溶け込んだ独自性のある戦略が必要であり、ブルー・オーシャンがひとつのキーとなってくるだろう。(今野篤)
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