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コラム

格付けってナニ? 大手メディアにみる経済報道の地盤沈下相場英雄の時事日想(2/2 ページ)

野球のルールを知らない記者が、プロ野球の記事を書くことはない。しかし経済報道では、こうしたあり得ないことがまかり通っているのだ。欧州や米国の財政危機に関するニュースが報じられている中、大手メディアの経済記者はどんな行動に出たのだろうか。

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基礎中の基礎

 話を最近の大手メディアの経済報道に戻そう。

 先に触れたように、経済取材、特に金融取引の記事を書く過程で「格付け」は知らないでは済まされない基礎中の基礎なのだ。

 政治部や社会部から経済部に移籍して間もないなどの理由があるのかもしれない。ただ、米国債が危機に瀕していたタイミングでは、筆者が確認しただけで相当数の経済担当記者が慌てふためいて取材に走っていた。

 平たく言えば、野球のルールを知らずにプロ野球の試合に赴き、本記や戦況、雑観を書くことに等しい行為だ。野球のことを知らない記者が書いた記事を読まされたら、読者はどう感じるだろうか。

 筆者は、慌てて取材に走ったとされる複数のメディアの報道をチェックしてみた。その大半は、海外紙や海外通信社、日本経済新聞の報道をなぞっただけの表層的なものだった。

 一方、ネット上で提供されるFX業者、あるいはネット証券のアナリストやスタッフが提供する解説記事も読んでみた。こちらは専門家が個人投資家向けに記しているだけあって、外電や図表を巧みに取り込み、分かりやすい記事が多かった。

 不特定多数の読者や視聴者を対象とする大手メディアと投資家向けに解説した金融業者を同列に比較することは乱暴かもしれない。ただ、どちらが面白い、役に立つかと言えば、圧倒的に金融業者が提供した情報なのだ。野球のルールを知らない記者が書いた記事よりも、元プロ野球選手が分かりやすく記した解説がリアリティーに勝り、かつ実利にもつながるからだ。

 先に当欄でも触れたが、日本の金融危機が去り、大手メディア各社は市況担当の経済記者を減らしつつある。市況の機微を知らない記者が、国際金融市場の動向を取材し、読者に提供しても中身は推して知るべし、なのである。

 世界の金融市場の動向を伝えるニュースは、対岸の火事と切り捨てていいものではない。主要国の株価や、外為市況の急激な変動は、輸入食品の価格などに転嫁される。半年から1年以内に庶民の生活に直結するニュース素材なのだ。軽んじていいわけがない。

 今からでも遅くない。大手メディア各社は、経済担当記者の布陣を強化すべきだ。

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