アドバイスの正しいもらい方:ちきりんの“社会派”で行こう!(3/3 ページ)
就職や転職、恋愛や資産運用など、さまざまなことを他人に相談する機会は誰しもあるでしょう。しかし、いくつかのことを踏まえて相談しないと、良いアドバイスはもらえない、とちきりんさんは主張します。
自分が聞こうとしていることは重要ではないかもしれない
最後のルールです。
- ルールその3
最後に「ありがとうございました。ほかになにか私が聞いておくべきコトがあるでしょうか? 今までお聞きしたこととまったく違うことでもいいのですが」と言うこと。
最後にこう言えば、この言葉の前に得た助言より何倍も有効なアドバイスが得られます。この質問の前、相手は「相談者が質問したこと」に答えています。反対に言えば、「相談者が質問しなかったこと」には触れていません。
しかし、「相談者が質問したこと」が「質問しなかったこと」より大事だという保証はありません。相談者は「何を質問すべきか」、正しく理解していないかもしれないからです。だから、「自分が何を質問すべきか」ということ自体を、相手に問うてしまった方がいいのです。
例えば、「博士課程に進学するにあたって、今までの指導教官の●●先生が他大学に移られるんで、僕もそっちに移ろうかなあと考えてるんです。でも研究環境は今の大学の方が圧倒的に恵まれてるし、家族もこの街に住みたがっているし、ここはいっそ研究室を変えて今の大学に残るべきか、悩んでいるんです。幸いにももう1人指導教官として尊敬できる先生もいらっしゃるし」と相談すれば、さまざまな“それなりに有益な”アドバイスがもらえるでしょう。
しかし……もしも最後に「ありがとうございました。ほかになにか私が聞いておくべきコトがあるでしょうか? 今までお聞きしたこととまったく違うことでもいいのですが」と言えば、助言者は……。
「ところで、博士課程に進むこと以外の選択肢は考えたの? 文系で博士号を目指すって大変なことなんだよ。分かってる?」と言ってくれるかもしれません。そして、そのアドバイスの価値たるや「相談者が質問したこと」への回答とはケタ違いの価値があるかもしれないのです。
相談される人は、相談する人の何倍も幅広い知識や経験を持つ場合が多いです。「質問をして得られること」は、「相談者が思いついた質問範囲のことだけ」です。しかし、「ほかに何かありませんか? 何でもいいです」と言えば、相手は自分の経験と知識の大海から「相談者に最も有益なメッセージ」を取り出してきてくれます。
「これをもらわずして何の意味がある?」という珠玉の助言が得られる可能性があるのです。
ただし、1時間の約束で会っている際、58分経過した時に「最後になにかアドバイスはありませんか? 何でもいいです!」と言われたら、ちきりんは「特にありません」と言うでしょう。
一方、半分の30分だけ経過した時に質問を終え、「ほかに聞いておくべきことは何かないですか?」と聞いてくれば、「そもそもの話なんだけどね……」と話し始めます。
分かりますね。
私たちは自分の思考の及ぶ範囲を超えた何かを得たいから、ほかの人のアドバイスを求めるのです。だったら自分で用意したくだらない質問なんてさっさと切り上げて、「相手が大事だと判断すること」について聞く時間を十分に確保する方がよほど意味があります。
良いアドバイスをもらうために
まとめておきましょう。
1.質問にはすべての選択肢を含めること
2.質問するのではなく、自分を理解してもらうこと
3.「自分の聞きたいこと」は半分の時間で済ませ、残りの時間は「相手がコレを伝えておきたいと思うこと」を話してもらうこと
この3つに気を付けておけば、人から得られる知見や助言は圧倒的に豊かなものになると思います。
そんじゃーね。
著者プロフィール:ちきりん
兵庫県出身。バブル最盛期に証券会社で働く。米国の大学院への留学を経て外資系企業に勤務。2010年秋に退職し“働かない人生”を謳歌中。崩壊前のソビエト連邦など、これまでに約50カ国を旅している。2005年春から“おちゃらけ社会派”と称してブログを開始。著書に『ゆるく考えよう 人生を100倍ラクにする思考法』がある。Twitterアカウントは「@InsideCHIKIRIN」
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