2011年秋冬モデルに見る、「スマホ時代に最適化」されたauの戦略:神尾寿の時事日想・特別編(3/3 ページ)
2010年秋、KDDIの田中孝司氏が社長就任時に言ったのが「スマートフォンへの対応が遅れた」。あれから1年、スマートフォン重視の姿勢で新しい体制作りを行ってきたKDDIはどこまで成果を出せたのか。先日発表されたauの2011年秋冬モデルを見ながら考えたい。
アプリ/コンテンツ分野でもスマホ時代に布石
今回のKDDIの発表では、アプリ/コンテンツ分野も「スマホ時代」に大きく踏み込んだ内容になった。
例えば、ソーシャルアドレス帳アプリ「au one Friends Note」は、以前からKDDIが搭載してきたソーシャルアプリ「jibe」にアドレス帳機能を追加したもの(参照記事)。現在「jibe」として提供しているソーシャルサービスのフィードをまとめて表示できる機能に加えて、アドレス帳のデータ管理やグループ分け、バックアップ機能に対応。Twitterやmixi、Facebook、Evernote、Picasa、はてなブックマークなど主要なソーシャルサービスと連携し、「ARROWS Z ISW11Fでは端末本体の電話機能ともダイレクトに連携する」(説明員)という。スマートフォン上のアドレス帳の進化とソーシャルサービスの融合は、現在のネット業界のトレンドであり、"電話機能"を軸にすればキャリアの関われる領域・可能性も大きい分野だ。その点で、au one Friends NoteはKDDI発のソーシャルアプリとして、今後さらに重要な役割を担うことになるだろう。
またコンテンツ面では、auケータイ向けのEZwebコンテンツのスマートフォン移行も推進。約200社のコンテンツプロバイダーと協力し、10月13日からauスマートフォン向けに500コンテンツ提供すると発表した。これにあわせてau oneポータルサイトもリニューアルされ、auスマートフォンからEZwebコンテンツにアクセスできる「メニューリスト」を新設して18カテゴリーから好みのコンテンツを探せるようになる。
ケータイ時代のコンテンツ引き継ぎは、今後さらに一般ユーザーのスマートフォン移行が進むことを鑑みれば、必須といえる部分だ。モバイルWiMAX対応スマートフォンの投入など先進性の部分だけでなく、こうした地味だが重要な、一般ユーザー向けの取り組みもしっかり行ってきたことも見逃せないポイントだろう。
「スマホ時代に最適化」されたKDDI
KDDIの秋冬モデルの端末とサービスを一言で総括すると、それは「スマートフォン時代への最適化が完了した」となるだろう。今後、キャリアが豊富かつ多数のスマートフォンやタブレット端末を受け入れるためのインフラ戦略の礎ができあがり、ハイエンドモデルを通じて、マルチネットワーク時代に向けた端末作りも始まった。アプリやコンテンツ面でも、キャリアの役割や優位性をうまく打ち出しつつ、外部企業との連携スキームもできあがりつつある。
KDDIは今回の発表に合わせて「未来は選べる」というキャッチフレーズを用意したが、その言葉どおり、多様なプラットフォーム・多様な端末・多様なニーズが「キャリアとして受け止められる素地」をきちんと作ってきた。今回の記者会見では、一部のメディアや記者が、いまだ発表前の不確定情報に基づいて特定の端末が「auから発売されるかどうか」と執拗かつ不毛な質問を繰り返していた。しかし、KDDIがキャリアとして「選べる未来・様々な可能性」を受け入れる準備を整えてきた、という部分こそが今回重視すべきところだったと筆者は思う。
1年前、田中氏自らが語った「スマートフォンへの対応が遅れた」状態から、KDDIはかなり大胆にスマートフォン時代に舵を切り、自らを新時代に合わせて変化させた。特にマルチネットワークを武器とするインフラ面での優位性の矛先は、同じくインフラを強みとするドコモに向けられたものだ。
今回の秋冬モデルからは、スマートフォン分野でドコモのシェアに総力戦を仕掛ける、KDDIの戦略が垣間見えた。
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