ジョージ・ソロス氏が説く、大恐慌を防ぐための3つのステップ:藤田正美の時事日想(2/2 ページ)
ひょっとしたら世界大恐慌に陥るかもしれないというときに、日本政府はどこまで警戒しているのだろうか。今回の時事日想はフィナンシャルタイムズ紙に掲載されたジョージ・ソロス氏の一文を基に、今後の世界経済を占ってみたい。
ドジョウは世界恐慌を警戒しているのか
これは大胆な、というより大胆すぎる提案と言えるかもしれない。基本的にユーロ圏を1つの国のようにしようという提案だからである。ユーロボンドといった共通債券を発行しようというのも同じ意味を持っている。しかし財政政策を統一するということは、豊かな国が貧しい国の面倒を見るということだ。
1つの国の中でも、当然、豊かな地方とそうではない地方がある。日本でも県民所得は都道府県によって相当の差がある。その経済力の差を国からの交付金という形で埋めているのが実情だ。国の中であればそういった所得移転はある程度納得できるだろうが、ユーロ圏は「国」ではない。所得移転と言われれば、豊かな国の国民はなかなか納得できないだろう。
さらにソロス氏がECBに期待しているのは、個別の銀行にいわゆるPIIGS(ポルトガル、アイルランド、イタリア、ギリシャ、スペイン)などの国債を買わせることだ。日本に例えて言えば、日本銀行が銀行にカネを貸すから国債を買えという指示を与えるに等しい。こうなると国の信用チェックという市場の1つの機能が失われることになる。銀行が買った国債を中央銀行が買い取って銀行に資金を融通するという形と、中央銀行が指示して銀行に国債を買わせるという話は、次元の異なる話だと思う。
このソロス氏の提案は大胆すぎて現実性があるとは思えないが、他方、日本が来たるべき「第2の“金融ツナミ”」をどれほど警戒しているかというと、とても心許ない。ツナミの高さの高をくくって痛い目にあったのは、つい半年ほどの前の話である。世界でも最悪と言えるほどの深刻な原発事故を起こして、日本の経済状況を一気に悪くしてしまった。そして今、世界がひょっとしたら1929年の大恐慌に陥るかもしれないというときに、日本は本当に警戒しているだろうか。ナマズは地震を予知できるというが、ドジョウは果たしてどうだろう。
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