「iPhone 4S」と「Kindle Fire」、どっちがスゴい?:遠藤諭の「コンテンツ消費とデジタル」論(4/4 ページ)
新しいiPhoneの発表を受け、IT業界はアップルがどう動くのかに注目している。なぜならライバルのひとつであるAmazonがAndroidタブレット「Kindle Fire」を199ドルで発表したからだ。iOSとAndroidの戦いは今、新しいフェーズに入ったのではないだろうか。
REGZA Tabletでは、同社がスマートフォン向けに提供してきたリモコンアプリなども使える。これらは、マニアたちをしてかつて「録画神」と呼ばしめた同社の片岡秀夫氏らが作るもので、テレビとソーシャルについて示唆的な内容を含んでいる。結果的に、Kindle FireがAndroidをちゃっかり使ったように、新しい映像視聴体験の道具として東芝はAndroidを利用することになったのだ。
クラウドコンピューティングの普及にともなって、さまざまなものがネットにつながりはじめている。Kindle FireやREGZA Tabletという目的指向の端末が登場したのもそうしたことのひとつである。あるいは、電子ガジェットなどを自作するイベント「Make:」が人気となったのも、そうしたことと無関係ではないと思う。
今回のiPhone 4Sは、基本的にはこれまでのアップルの路線を継承しているように見える。しかし、iOSとAndroidの戦いはいま、次のフェーズに入ったのではないかと感じてしまうのだ。10インチ版のKindle Fire DXも待っているに違いない。ジョブズは、iPad発表時にKindleを高く評価し、「我々はその肩に乗って、より高みを目指す」と言ったのを思い出した。
追伸:
この原稿を書いているのと前後して、スティーブ・ジョブズ氏の訃報が流れてきた。ジョブズ氏が作り出したデジタルの流れは、ここで書いたように、これからが本番なのではないかと思う。そんな中でのこの知らせを悼むとともに、心よりご冥福をお祈りする。
遠藤 諭(えんどう さとし)
1956年、新潟県長岡市生まれ。株式会社アスキー・メディアワークス アスキー総合研究所 所長。1985年アスキー入社、1990年『月刊アスキー』編集長、同誌編集人などを経て、2008年より現職。著書に、『ソーシャルネイティブの時代』(アスキー新書および電子書籍版)、『日本人がコンピュータを作った! 』、ITが経済に与える影響について述べた『ジェネラルパーパス・テクノロジー』(野口悠紀雄氏との共著)など。各種の委員、審査員も務めるほか、2008年4月より東京MXテレビ「東京ITニュース」にコメンテーターとして出演中。
コンピュータ業界で長く仕事をしているが、ミリオンセラーとなった『マーフィーの法則』の編集を手がけるなど、カルチャー全般に向けた視野を持つ。アスキー入社前の1982年には、『東京おとなクラブ』を創刊。岡崎京子、吾妻ひでお、中森明夫、石丸元章、米澤嘉博の各氏が参加、執筆している。「おたく」という言葉は、1983年頃に、東京おとなクラブの内部で使われ始めたものである。
関連記事
- 「基本無料」でビジネスをする方法――ソーシャルゲームのマネタイズ戦略
ソーシャルゲームやスマートフォンのアプリ市場の一部で共通しているのが、「基本無料だが別の方法で課金を行う」というビジネスモデル。特にソーシャルゲームには、長く遊んでもらう秘訣、価格設定など、さまざまなノウハウがある。『ブラウザ三国志』などを手がけた椎葉忠志氏らが語る「マネタイズの勘所」とは……? - 遠藤諭の「コンテンツ消費とデジタル」論:iPhoneとゲームボーイの共通点――横井軍平、そしてオモチャの時代
優れたオモチャには、子どもにもすぐ遊べるシンプルさと、触った途端にパッとスムーズに動くレスポンスが必須だ。iPhoneを触っていて思ったことがある。「コンピュータはいま、ようやくオモチャの世界に追いついたのではないか?」 - 野島美保の“仮想世界”のビジネスデザイン:SNSを前提としないソーシャルゲームは作れるか、“分散型”の可能性を探る
「SNS上で提供され、SNSの友人とプレイする簡単なオンラインゲーム」と定義されるソーシャルゲーム。しかし、SNSの存在を前提にしなければ、ソーシャルゲームは作れないのだろうか。筆者は別の可能性を提示する。
関連リンク
Copyright© ASCII MEDIA WORKS. All rights reserved.