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なぜ男性ファッション誌『smart』は売れているのか(前編)仕事をしたら“若者はナゾ”だった(4/5 ページ)

男性向けの雑誌が苦戦している。しかし逆風が吹き荒れる中でも、売れている雑誌がある。それが男性ファッション誌の『smart』だ。販売部数を伸ばしている理由、そして若い男性の心をつかむ秘けつなどを、太田智之編集長に聞いた。

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編集者が陥りやすいワナ

土肥:お話を聞いていると、AKB48を表紙に起用したり、巨人の原監督インタビューを掲載したり、新しい読者の獲得に力を入れているように感じますね。

太田:月刊誌は1年に12冊発行されますが、ここでも編集者が陥りやすいワナがあると思うんです。「ウチの読者は毎号読んでくれている」という思い込みですね。しかし「A君は毎月『smart』を買ってくれている」と思い込んでしまうと、編集者は繰り返すことに恐怖を感じてしまいます。例えば同じ人が出ていたり、同ジャンルの企画を掲載することに。

土肥:やがて同じことを避け始めるということですか?

太田:そうです。この恐怖に取り付かれると、避けて、避けて、避けてしまう。避けてばかりいると、その結果、できた企画の中身はスカスカになりがち。編集部では「もちろん毎号買っていただいている読者もいますが、全読者が12冊すべてを読んでいるのが当たり前ではない」という前提に立ち、企画を練り上げています。

 裏原宿がブームだったころに比べ、今の男性は「まず一番に服がほしい」という気持ちが弱くなっているかもしれません。しかし、その代わりに腕時計、靴、カバンなどに興味を持っている人が増えてきています。

 服はリーズナブルなものを装い、腕時計は高級なものをつける。腕時計だけでなく、靴やカバンにもお金をかける男性が増えてきました。

 編集部では「若い男性の間で、腕時計が注目されている!」という仮説を立て、腕時計の特集を今年は7回も行いました。

土肥:避けることをせず、同じことを繰り返したわけですね。

太田:編集者の立場からすると「年に7回も腕時計の特集を組んでいると、読者はあきてしまうのでは……」と不安になります。しかし考えてみると、その不安に根拠はないんですよ。私は読者が読みたい企画であれば、繰り返し同じ企画を組んだ方がいいと思っています。

 腕時計の特集を何度も行っていると、いろいろな“気づき”があります。例えば、今の若い男性は高級な時計からリーズナブルな時計まで、どっちも欲しいという人が多い。これはアンケートからもうかがえましたし、読者調査でも同じ結果が出ました。

土肥:へー。


『smart』11月号の付録

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