ギリシャがデフォルトを起こせば、どうなる?:藤田正美の時事日想(2/2 ページ)
欧州が金融不安に陥っている。もともとはギリシャの債務危機に端を発したものだが、それがユーロ圏の危機となり、さらに欧州全体をも巻き込んでいる。もしギリシャがデフォルト(債務不履行)を起こせば、世界経済はどんなダメージを受けるのだろうか。
「第二の大収縮」が起こる可能性
金融の「大収縮」が起こると実体経済が大打撃を受ける。東日本大震災で部品のサプライチェーンが切れ、自動車や電機などの組み立てメーカーが操業できなくなったように、金融という血液が止まれば、筋肉や脳などの細胞は活動できなくなる。いま欧米で「第二の世界大恐慌」が懸念されているのはこのためだ。銀行が融資を続けるためには銀行の資金調達が最も重要だ。そして資金調達のためには信用が最も重要だ。だから増資や公的資金注入、EFSF資金の活用で、欧州の銀行の信用力を維持しようと躍起になっているのである。そのための資金は約20兆円というからこれも半端な数字ではない。
ギリシャだけでもこれだけ大変なのに、そこにイタリアやスペインが加われば、世界経済は確実に大打撃を受ける。さらに米国の金融機関でささやかれている「2008年の積み残し不良債権」が顕在化し、それこそ最近言われている「第二の大収縮」(第一は1929年の大恐慌)が起こる可能性が高い。
2008年とこの2011年で世界経済の最も大きな違いは、BRICsやアジア諸国などの「成長エンジン」の力が弱まっていることだ。中国は国内インフレ圧力が高まっていることが成長阻害要因となっている。インドも同様だ。これらの新興経済国からの欧米への輸出が打撃を受ければ、当然、日本から新興国への輸出も落ちる。
この第ニの「金融ツナミ」(ちなみにこの言葉を最初に使ったのは、FRB前議長のアラン・グリースパン氏が2008年に米連邦議会で証言したときだと思う)に備えるため日本政府ができることは、内需をいかに支えるかだろう。東日本大震災の復興需要は大きな機会なのだと思う。その意味では、今、復興の財源論議に力を入れるのは時間の無駄である。GDPの2倍に達するような公的債務を抱えているので、目先の財源論議よりも、全体の財政再建のロードマップのほうが重要だ。
欧州金融危機を緩和するには政治的リーダーシップが不可欠である。ドイツのメルケル首相やフランスのサルコジ大統領に「決断」を要求する米国のオバマ大統領も含めて、リーダーシップが足りないと評価されている。もちろん日本も同じだ。というより、政治的リーダーシップが不足している状況を「日本化」と呼ぶほど、日本は政治リーダーのいない国と見られている。その政治不在の状況をつくっているのは、日本国民自身だが、その状況の犠牲になるのも日本国民自身なのである。そのことを痛感するようなことにならなければいいが、果たしてどうだろうか。
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