リコー、ニコン好きには、Macユーザーが多い?:遠藤諭の「コンテンツ消費とデジタル」論(3/3 ページ)
アスキー総研では2年ほど前、『Macユーザー調査』を行った。Mac OS利用者に、好きなカメラブランドはどこですかと聞いたところ「リコー」を挙げる人が多かった。なぜMacユーザーはリコーのカメラが好きなのか。その理由を考察した。
この、Macとリコーの協調関係。デジタル機器の世界を長く見てきたつもりの私も知らなかった。実は、リコーの方にお会いしたときにその話をしたことがあるのだが、少なくともその方はご存じなかった。アップルの、世界的にも評価されているデザインと商品コンセプトの世界。それと、銀塩の「GR1」以降、オヤジデジカメとして不動の位置を占めてきたリコーが、“見えない強い糸”で結ばれていたのだ。
ブランド同士の協調関係は、アスキー総研のメディアとコンテンツに関する1万人調査「MCS 2011」でもかなり詳しく見ることができる。Mac OS利用者の好きなカメラブランドを調べると、トップはキヤノンで30%だが、これはアンケート回答者全体の比率とそうは変わらない。それに対して、Mac OS利用者のリコー支持率は7.7%で、これは全回答者の平均の3.2倍にもなる。そして、全体平均の1.8倍となる26.2%の支持を得たブランドが、ニコンだ。
これとは逆に、好きなカメラブランド別のMac OS利用率を調べてみると、リコー好きには他のブランドを圧倒してMac OS利用者が多いことが分かる。やや離されるものの、ニコン好きもリコーに次ぐ2位に付けている。デザイン性に優れ、都会的で、いかにもアップルと相性の良さそうなソニーは、むしろ反発し合っているようにさえ見える。
iPhone 4Sでは、ソニー製の800万画素の背面照射型CMOSを搭載するカメラが、個人的には気になっている。米国では「iPhoneography」という言葉も出てきていて、これはカメラメーカーがいちばん聞きたくない言葉だろう。「Nikon 1」のクールなデザインは、この層を取り込めるのか? それとも、Mac OS利用者とリコーのように、カメラに求める美学は別のものなのだろうか? モノ作りとデザインの話は、とても悩ましくもどこまでも尽きない。
好きなカメラブランド別、Mac OS利用率。好きなカメラブランドごとの、Mac OSの利用率を調べてみると、トップはリコー好きの13.7%。次いでニコン好きは8.2%となり、ソニー好きやキヤノン好きに比べてかなり高い比率になっている
遠藤 諭(えんどう さとし)
1956年、新潟県長岡市生まれ。株式会社アスキー・メディアワークス アスキー総合研究所 所長。1985年アスキー入社、1990年『月刊アスキー』編集長、同誌編集人などを経て、2008年より現職。著書に、『ソーシャルネイティブの時代』(アスキー新書および電子書籍版)、『日本人がコンピュータを作った! 』、ITが経済に与える影響について述べた『ジェネラルパーパス・テクノロジー』(野口悠紀雄氏との共著)など。各種の委員、審査員も務めるほか、2008年4月より東京MXテレビ「東京ITニュース」にコメンテーターとして出演中。
コンピュータ業界で長く仕事をしているが、ミリオンセラーとなった『マーフィーの法則』の編集を手がけるなど、カルチャー全般に向けた視野を持つ。アスキー入社前の1982年には、『東京おとなクラブ』を創刊。岡崎京子、吾妻ひでお、中森明夫、石丸元章、米澤嘉博の各氏が参加、執筆している。「おたく」という言葉は、1983年頃に、東京おとなクラブの内部で使われ始めたものである。
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