焦点はギリシャからイタリアへ、欧州は債務危機を乗り越えられるか:藤田正美の時事日想(2/2 ページ)
欧州では国債のデフォルト懸念の焦点がギリシャからイタリアへと移っている。イタリア国債の金利は6%をはるかに超えているが、持続的でない現在の水準から抜け出る方策はまだ見つかっていない。
イタリアのプライマリーバランスは日本よりマシだが……
ただ、イタリアの国債がこれ以上売り込まれるようなことになれば、せっかく10月末にまとめた包括支援策でも足りなくなることは明白だ。EFSFは少なくとも2兆ユーロ(約214兆円)以上に増額しなければならないと言われている。さらにジョージ・ソロス氏は、ロイターのインタビューに答えて、こんな気になる発言もしている。
「債務危機に備えて欧州は十分な資金力(ビッグ・バズーカ砲)を手に入れたと言うことができるが、それを銀行などに注入してしまってはだめだ。保証するだけにしておけばビッグ・バズーカを温存しておくことが可能だが、使ってしまえばまた資金を集めなければならない」。この発言を裏返せば、1兆ユーロでは足りないことは明白であるということである。
ギリシャに次いで窮地に陥っているイタリアは、しかし、いわゆるプライマリーバランスで見ると赤字ではない。IMFがイタリアに対して融資枠の設定を申し出たが、イタリアはそれを断ったとベルルスコーニ首相は語っている(もっともIMFのラガルド専務理事はそんなオファーはしていないと語っていて、真相はよく分からない)。ベルルスコーニ首相にとってみれば、ユーロ圏で第3位の規模をもつイタリアが、ギリシャに次いで標的にされるのは侮辱的に感じられるはずだ。
日本は、数字で見ればこのイタリアよりもひどい状態。G20首脳会議で野田首相は消費税引き上げについて「国際公約」したが、焼け石に水のような増税だ。この状態が続けば、日本の国際収支が赤字になったとき、日本の国債が売り込まれることは間違いない。それが2年後なのか、3年後なのか。現在の超円高で残り時間が短くなりつつあることは明らかである。
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