デジタルの波は2つのタブーを消した……で、残りは:中村伊知哉のもういっぺんイってみな!(4/4 ページ)
2011年、融合法制と地デジが達成された。いずれも20年前はタブーだったが、デジタルの波がこの2つを実現させたと言っていいだろう。では、タブーはもう残っていないのだろうか。実はまだ3つばかり残っているのだ。
2つのタブーと3つのタブー
2つのタブーが失せ、何だか気が晴れた気もする。だが、まだタブーは残る。3つばかり。
1つは、「周波数オークション」。これもずっと民間では論議されてきたが、政府は取り上げてこなかった。ただ、ここに来て総務省も研究会を設置、真剣に取り組んでいる。近い将来、2つのタブーのように、反対から推進に転じるようになると期待する。
もう1つは、「NTT完全民営化」。政府が株を保有する特殊法人であるNTT。日本電信電話株式会社法という法律に基づいて設立されている。人事面や事業面での規制が残っているのだ。これを完全民営化するタイミングが近づいていると思うのだが、なかなか議論として立ち上ってこない。
昨年、盛り上がった「光の道」の過程で、NTTが組織再々編してこれに乗るなら、完全民営化の規制緩和も、という議論が水面下で行われたが、結局その機会を逸したので、次のチャンスが見えない。というか、そもそもNTTが国という株主をいただいているメリットを感じている限り、外圧でもなければ動かないかもしれない。
最後は、「NHK民営化」。これも放送法で規定された特殊法人。国との近さから、報道内容の独立性が問題になったりする。NHKは放送のネット配信に意欲を見せ、民放の反発を買ったりしているが、であれば民放化して堂々とビジネスを展開するのも選択肢かもしれない。
デジタルの波が2つのタブーを消失させた。3つのタブーに挑む原動力は何か。ソーシャルの波か、国際化か、少子化か、エネルギー問題か。それともTPP(※)か! あるいはそれら全てだろうか。
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