海外で、日本食レストランを開業する苦労とは:松田雅央の時事日想(4/4 ページ)
海外に行って、日本食レストランで食べたことがある人も多いだろう。海外で日本の食材を手に入れるのは大変そうだが、どのような苦労があるのだろうか。ドイツで日本食レストランを営業している、とあるオーナーに話を聞いた。
――震災をきっかけに、経営方針が変わったそうですね。
オーナー:以前は、経営者として店を大きくし、ゆくゆくはチェーン店展開も考えていました。でも、これまで積み重ねてきたものが崩れ去る震災の様子を見て、自分の中で何かが変わったんです。店を大きくすることより、もっと地道にお客様とのつながりや付き合いを大切にしようと。
この店は通行人がぶらっと入るような繁華街の店ではありません。来てくれるのはここで食べるという目的を持っているお客さんがメインだからありがたいです。安い店がよければ他の店に行ってもらえばいいし、それなりの御代をいただいて本物を出します。とにかく商業ベースの商売を目的にしていない。
チェーン店など拡大主義とは別の方向にこれからの可能性があるように思います。口コミで常連さんが増えていく。それがいいな。そして1人1人のお客さんに日本文化・食文化を直接伝えていきたい。それが海外にある本物の日本レストランの使命であるとも思っています。
東日本大震災と福島第1原発事故は、日本国内だけでなく海外の日本関連ビジネスのあり方にも根本的な影響を与えた。Tokio Diningが苦難のときを乗り越えられた理由は本物へのこだわりと、常連を大切にする姿勢だったように思う。
インタビューの間も続々と常連さんが来店し、アルガイアーさんは必ず笑顔で声をかけていた。誠意やもてなしの心は世界で通用する日本の誇るべき文化であり、かけがえのない財産でもある。
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