なぜ日本企業は海外で苦戦するのか? “ツーステップ方式”の限界:ちきりんの“社会派”で行こう!(3/3 ページ)
数十年前には世界を席巻していながら、現在は競争力を失いつつある日本の家電産業。その背景には何があるのか。ちきりんさんは理由の1つとして、“ツーストップ方式”の限界があるからではないかと指摘します。
流れの早い現代ではタイミングの遅れが致命的に
この違い、分かりますよね。最初から世界で売ることを前提としたワンステップ方式と、日本で売れた物を「海外展開しよう!」と考える2ステップ方式の違いです。
ワンステップ方式では市場は1つです。1つの市場の中に、いろんなセグメントがあるのです。しかし、ツーステップ方式では最初から市場は「日本市場」と「日本以外の市場」に分かれています。そして、日本以外の市場は常に「後から考える」のです。
日本企業でも、売り上げの大半が海外であるという商品を持っているメーカーなどでは、ワンステップ方式で商品開発をしているのだと思います。反対に言えば、そうでなければ「売り上げの大半が海外」などということは実現できないのです。
特に、北欧のように自国の人口が少ない国や、韓国のように為替危機を経験し、外貨で売り上げを立てることが至上命題になった国では、「最初から世界の市場を見る」ことが当然のように行われているのでしょう。
その点、購買力の高い人口が多い日本市場をホームマーケットとして抱える日本企業にとっては、「まずは日本市場、そして海外」という発想はごく自然なものだったかもしれません。
しかし、技術進歩やトレンド変化のスピードが速い分野では、2段階に分けて考えることによるタイミングの遅れは致命的です。また、最初から世界市場を見すえていれば、より大きな開発予算、投資が可能になったという商品もあるでしょう。
さらに、最初から世界の顧客ニーズをみて開発することで、よりそれらの市場に合った商品を作り出せるのではないでしょうか?
世界を席巻していた家電においても日本メーカーが勝てなくなっている背景には、「日本で売れている最高級品を世界に持っていけば、世界でも売れるはず」という考え、すなわち「日本の商品を世界に持っていく」というツーステップ方式の考えが、「世界で求められているのは、シンプル機能の低価格品だから最初からそっちを開発しよう!」と考えた企業に勝てなくなっているという現象に見えるのです。
シビアな言い方をすれば、ツーステップ方式での商品開発とは「グローバル視野の欠如」を意味します。商品企画の最初から、そして販売計画の最初からワンステップ方式で考えている世界の競合企業と戦うためには、ツーステップ方式はあまりに不利な方式であると言わざるをえないでしょう。
そんじゃーね!
『自分のアタマで考えよう』(ダイヤモンド社刊)
ちきりんさんによる新刊『自分のアタマで考えよう』がこのほど発売されました。
「プロ野球の将来性」「結論が出ない会議の秘密」「少子化問題のゆくすえ」「婚活女子の判断基準」「消費者庁が生まれた真相」「就活で失敗しない方法」「自殺の最大の原因」など、社会問題や日常の疑問を考えながら、「ちきりん流・思考の11のルール」を分かりやすく解説しています。
著者プロフィール:ちきりん
兵庫県出身。バブル最盛期に証券会社で働く。米国の大学院への留学を経て外資系企業に勤務。2010年秋に退職し“働かない人生”を謳歌中。崩壊前のソビエト連邦など、これまでに約50カ国を旅している。2005年春から“おちゃらけ社会派”と称してブログを開始。著書に『自分のアタマで考えよう』『ゆるく考えよう 人生を100倍ラクにする思考法』がある。Twitterアカウントは「@InsideCHIKIRIN」
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