そのパッケージングはいらない!? コンテンツをどう売ればいいのか:ちきりんの“社会派”で行こう!(3/3 ページ)
豊かになり、趣味嗜好が多様化してくると、そのニーズに応えるためのパッケージングが難しくなるというちきりんさん。それがコンテンツ価値の下落にもつながっているのではないかと主張します。
パッケージング・メディアの衰退でコンテンツ価格が低下
そしてこれと同時に起こっているのが、情報コンテンツ価格の急激な低下です。ここのところ、映像にしろ文章にしろ音楽にしろ、すべての情報コンテンツの値段が下がっています。
これも、従来のパッケージング・メディアの「見せ方」「売り方」が時代遅れになり、コンテンツを高く売ることができなくなったからでしょう。
コンテンツの価格はそれ自体の価値だけではなく、やはり「それをどう見せるか、どう売るか」という仕組みに依存します。今までは、新聞や地上波テレビという圧倒的な力を持ったパッケージング・メディアが存在していました。だからコンテンツにそれなりの値段が付いていたのです。
しかし、パッケージング産業が(上に書いたように)市場の多様化についていけずにその価値を落としてしまったため、多くのコンテンツクリエーターや制作会社スタッフはワーキングプア状態に追い込まれつつあります。
海外の販路が新たに拡がりつつある漫画でも、そのパッケージングで一番もうけているのは漫画家でも日本人でもなく、外国人アニメファンの周囲にいる人たちだったりします。
コンテンツの価格が下がっているのは、コンテンツの価値が下がったからではなく、パッケージングメディアの価値が下がったから、というのは皮肉なことです。
これから誰かが「情報」という分野に関して、「お金がとれる(=消費者がお金を払っても手に入れたいと思う)」新しいパッケージングの方法を生み出さない限り、コンテンツクリエーターにとっては受難の時代が続くことでしょう。
そんじゃーね。
『自分のアタマで考えよう』(ダイヤモンド社刊)
ちきりんさんによる新刊『自分のアタマで考えよう』がこのほど発売されました。
「プロ野球の将来性」「結論が出ない会議の秘密」「少子化問題のゆくすえ」「婚活女子の判断基準」「消費者庁が生まれた真相」「就活で失敗しない方法」「自殺の最大の原因」など、社会問題や日常の疑問を考えながら、「ちきりん流・思考の11のルール」を分かりやすく解説しています。
著者プロフィール:ちきりん
兵庫県出身。バブル最盛期に証券会社で働く。米国の大学院への留学を経て外資系企業に勤務。2010年秋に退職し“働かない人生”を謳歌中。崩壊前のソビエト連邦など、これまでに約50カ国を旅している。2005年春から“おちゃらけ社会派”と称してブログを開始。著書に『自分のアタマで考えよう』『ゆるく考えよう 人生を100倍ラクにする思考法』がある。Twitterアカウントは「@InsideCHIKIRIN」
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