何が問題なのか? メディアにころがる常識:津田大介×鈴木謙介、3.11後のメディアと若者(1)(3/6 ページ)
メディアが構造的な問題に苦しんでいる――。購読部数の減少、広告収入の低下などさまざまな課題が押し寄せているが、解決の糸口が見えてこない。こうした問題について、ジャーナリストの津田大介氏と社会学者の鈴木謙介氏が語り合った。
ネット専業メディアの問題点
津田:ネット専業のメディアで、きちんと運営しているところが少なすぎますよね。これは「2ちゃんねるまとめサイトの功罪」といった話になる。ネットの世界では「大手マスコミは偏向報道をしている」「編集の仕方が悪い」などと、既存メディアを叩いている。でも、やっていることは全く同じなんですよ。
鈴木:編集していますものね。
津田:みんなが叩きやすい情報をピックアップし、そして叩く。そうすることでアクセスを増やし、広告料を増やしていく。その結果、運営者はうまいメシを食うことができる。
あとゴシップ系の記事がよく読まれるというのも、同じような構図。他人の不幸を楽しむ人は多いので、そうした記事はアクセスが集まりがち。そして運営者はアクセスが集まるような記事を狙いがちになる。それはジャーナリズムでもなんでもない。
マスゴミよりもひどい“マスゴミ的なこと”をしている人たちが縮小再生産され、そうしたマスコミの悪い部分だけ集めた小さなメディアが拡大、拡散している状況がありますよね。
鈴木:ネットの場合は、「違う人からどう見えるか」ではなく「うがった見方を他者と共有する」ことがメディア批評の醍醐味になっていますからね。その一方で、ネット専業のメディアも成熟しつつあるのではないでしょうか。最近、「遊び心のある記事が減ったなあ」と思っています。アイティメディアも含めて(笑)。
津田:おっ! アイティメディアを叩いているわけですか? (笑)
鈴木:インプレスもそうですねえ(笑)。全体的に「とりあえずガンダムネタを書いておけ」といった雰囲気がなくなりつつあるのではないでしょうか。
もちろん読者数が増えていけば、遊び心のある記事が減るのは仕方がないのかもしれません。しかしちゃんとしようとすればするほど、遊び心のある記事はいびつなまとめサイトの十八番ということになってしまう。
またネット専業のメディアを見ていると、ちゃんとした記事はあるものの、ちゃんとしていない記事を読もうとすると『虚構新聞』か『2chまとめサイト』かという話になってしまう。
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