野球をつまらなくしないでくれ、オヤジたちよ:郷好文の“うふふ”マーケティング(3/3 ページ)
日本の野球界で起こった、読売巨人軍元GMの清武英利氏による人事介入批判とDeNAの球団経営参加をめぐるゴタゴタ。野球は誰のためにあるのか? 改めて考える機会となった。
オーナーよ、野球は文化なのだ
DeNAのゴタゴタの背景にあるのは日本野球機構である。これも分かりにくい組織だ。大きく3つの階層がある。
- 実行委員会……各球団からの役員で構成され「地ならし」や「意見調整」の機関
- オーナー会議……球団保有する組織の代表者による会議で、実質的な意思決定機関
- コミッショナー……社団法人日本野球機構の代表者で、野球人以外が任命される
ひと言で言えば「オーナー権力がいびつ」。古くはリーグ分裂(1950年)、新しくは選手の青田買い(江川投手問題)、球団統合(近鉄とオリックス)など、オーナーが強力(ごうりき)で仕切ってきた歴史がある。
しかも一枚岩ではない。長年に渡り興行と規則・ルールが2つの団体で運用され、統合したのは3年前の2008年。セとパで意見がガチンコは茶飯事で、「3.11後に興行を延期するかしないか」の不一致も記憶に新しい。
それを律するはずのコミッショナーには“見識の高い人”が就任するが、任免はオーナー権限である。一般企業に例えると、社長の任免権を各事業部長が握り、各事業部長が決めたことを執行するのが社長って、変じゃないですか?
またサッカーのJリーグと異なり、「地元主義」ではなく「球団主義」である。球場やその地域を育てる意識が薄いチームが目立つ。
球団オーナーに言いたい。チームのオーナーとしてだけでなく、野球文化のオーナーとして振る舞ってほしい。ファン主義こそ球団のイメージ向上の原点だ。
野球協約から消えた一行
実は、2008年までの野球協約から消えた一行が大切だった。
わが国の野球を不朽の国技にし、野球が社会の文化的公共財となるよう努めることによって、野球の権威および技術にたいする国民の信頼を確保する。
2009年の協約改正からこの一行が消えた。野球機構は単なる興行運営団体に成り下がったのか。なぜ好選手はみんなメジャーに行きたがるのか。オヤジたちはもう一度、その理由を考えてみてほしい。
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