会社員は何をもって「優秀」と言うのか:吉田典史の時事日想(3/3 ページ)
職場で「あの人は優秀だなあ」と言われている人がいるだろう。なぜその人は「優秀」といった評価をされているのだろうか。業績を上げているだけでなく、他にも要因があるかもしれない。それは……。
「優秀」と言われている人の特徴
ここまでを読むと、「全人格的な評価」は悪の象徴であるかのように感じ取る人もいるかもしれない。だが、私はむしろその逆の考えを持っている。
ここで考えたいのは、この10数年間、成果主義が浸透し、メディアで盛んに「業績達成の重要性」が指摘されたことだ。それにともない、「全人格的な評価」があまり語られなくなった。
その結果、日本企業が「業績」だけで社員の優劣を判断し、協調性や規律、リーダーシップなどを評価していない、という"誤解"が世の中に浸透してしまった。確かに1980年代までくらいに比べると、評価全体において行動評価の比率は下がっている。しかし、依然として日本企業では重要な評価項目である。
さらに、一部の経営コンサルタントは、企業が「全人格的な評価」をすることによって「労働の生産性を低くする」「業績が伸び悩むようなる」といった指摘をしているが、これは事実なのか。もっと深い調査が必要である。「業績だけで優劣を判断する評価が、生産性や業績を向上させる」ならば、もっとたくさんの企業が成長していいはずだ。ところが、必ずしもそうとは言えない。
私が38歳で会社を離れ、1人で仕事をするようになってようやく痛感したのは、仕事ができるに人はそれなりの人格者が多いことだ。少なくとも、その傾向はある。
社内で「優秀」と言われている人は、協調性や規律、リーダーシップなどの面で他人よりも優れたものを身に付けている。その人との電話や、メールに書かれてある内容からも感じることだ。これは取材先でも、取引先にも言える。「人格者」とまでは言えないかもしれないが、何かが優れていることは間違いない。
ただ漠然と、目の前の仕事をこなすぐらいでは、「優秀」とは言えないのだと思う。そして、周囲の人たちから人格や行動なども一目を置かれる人は、部内でも成績が上がりやすい、いわゆる"おいしい仕事"が与えられる傾向がある。つまり、おのずと業績が上がりやすいのだ。
ここ10数年、私たちは業績だけに目を向けてきたが、実はそれ以上に、職場での言動に、そして上司や周囲との関係に気をつけるべきなのである。その姿勢や意識が、業績をグンと上げることになっていくのだから。業績が伸び悩む人は、まずは自身の発言や行動を振り返ってみたい。何かが、見えてくるはずだ。
関連記事
- 大企業の正社員、3割は会社を辞める
東日本大震災の発生以降、「今後どのように働いていけばいいのか」と考えるビジネスパーソンも多いのでは。ポスト大震災の働き方について、人気ブロガーのちきりんさんと人事コンサルタントの城繁幸さんが語り合った。 - ここでは働きたくないなあ……と大学生が思う業界
あなたはどこの業界で働きたいですか? 2011年3月卒業予定の大学生に聞いたところ「商社」がトップ、次いで「銀行」「食品」と続いた。日経HR調べ。 - どうすればいいのか? 年収300万円時代がやって来る
景気低迷などの影響を受け、会社員の給料が下がり続けている。低年収時代に会社員はどのように生きていけばいいのだろうか。この問題について、人事コンサルタントの城繁幸さんとフリーライターの赤木智弘さんが語り合った。 - 正社員の平均年収は449万円、たくさんもらっている業種は?
正社員の平均年収は449万円――。転職サービス「DODA」に登録している転職希望者への調査で明らかになった。年代別でみると……。 - ボーナスが支給されたら、すべきこと
そろそろボーナスが支給されるシーズンになったが、その明細書を見て喜ぶ人もいるだろう。しかし一喜一憂してはいけない。この機会に、上司と自らの評価について話し合ってみるのはいかがだろうか。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.