美術展の混雑から“成功の定義”を考える:ちきりんの“社会派”で行こう!(2/2 ページ)
団塊世代の退職などで、最近は平日でも混雑する展覧会が少なくないというちきりんさん。しかし、運営側としては「美術展が混雑している」ということを単純に成功ととらえていいのか、と疑問を呈します。
美術展の“成功の定義”は?
ところで、美術館や博物館、もしくは企画展などの“成功の定義”とは何なのでしょう?
当然ですが、観客が少なくて「待ち時間もなく空いていて観やすかった!」ことが展覧会の成功を意味するはずがありません。
一方で「予想を超える○十万人の来場があった」と聞くと「大成功!」というイメージを持つ人もいそうですが、「入場客数が多いこと」が美術展などの成功を意味するわけでもないでしょう。
ちきりんの超独断で書いてしまえば、成功かどうかは「観客が、展示された作品の持つ力を存分に感じることができたかどうか」によって判断されるべきだと思います。1時間もの列に並んで疲れ切った足で、大勢の人に押されながら、作品の放つ力を十分に受け止めるなんて不可能です。
フィジカルにはリラックス、メンタルには高揚感を感じられる環境を整えてこそ、そういうことが可能になります。だから、1時間以上もかかる長い列を作らせては「展示会の成功」なんてありえない、と思うのです。
文化というのは、本当は経済合理性の対極にあるべきものなのに、その世界においてさえ「入場客数」という、サイズを表す数的な指標が成功の基準の1つとされていること自体が、とても皮肉な話だと思います。
そんじゃーね。
『自分のアタマで考えよう』(ダイヤモンド社刊)
ちきりんさんによる新刊『自分のアタマで考えよう』がこのほど発売されました。
「プロ野球の将来性」「結論が出ない会議の秘密」「少子化問題のゆくすえ」「婚活女子の判断基準」「消費者庁が生まれた真相」「就活で失敗しない方法」「自殺の最大の原因」など、社会問題や日常の疑問を考えながら、「ちきりん流・思考の11のルール」を分かりやすく解説しています。
著者プロフィール:ちきりん
兵庫県出身。バブル最盛期に証券会社で働く。米国の大学院への留学を経て外資系企業に勤務。2010年秋に退職し“働かない人生”を謳歌中。崩壊前のソビエト連邦など、これまでに約50カ国を旅している。2005年春から“おちゃらけ社会派”と称してブログを開始。著書に『自分のアタマで考えよう』『ゆるく考えよう 人生を100倍ラクにする思考法』がある。Twitterアカウントは「@InsideCHIKIRIN」
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