北朝鮮はそんなに簡単に崩壊しない:ちきりんの“社会派”で行こう!(2/2 ページ)
金正日総書記の急死で「北朝鮮の独裁体制が崩壊するのでは?」という期待が高まっています。しかし、ちきりんさんは「北朝鮮はそんなに簡単には変わらないのでは?」と分析します。
誰も崩壊を望んでいない
また、どこの国も、軍事的に北朝鮮の体制を崩壊させたいと思っていません。米国はイラクのフセイン大統領を軍事力によって排除しましたが、彼らが北朝鮮の金政権打倒のために積極的なアクションをとることはありえないでしょう。
北朝鮮が核を持ったといっても、カリフォルニアの大都市を狙うのはまだ相当に難易度が高く、米国にとってこれが最大の軍事的な脅威であるとは思えません。
さらに、米国にとってイラクと北朝鮮は2つの点で大きく異なります。まず北朝鮮には石油がでません。民主化するメリットがないのです。
さらに北朝鮮はイラクと違って、今や米国の仮想敵国である中国の利害と絡んでいます。米国がイラクに侵攻しても中国は不快感を示す程度ですが、北朝鮮の場合はそんな程度では収まらないでしょう。
石油も出ないし、中国を怒らせるのもややこしい。独裁者には頭にくるし、核を持つなど困ったモノだけれど、だからといって今すぐ武力でどうこうする必要はない、というのが米国の本音だと思います。
韓国も「北朝鮮も同じ民族に核を落とすことはない。落とすなら日本に落とすだろう」と思っているでしょうから、本質的には核を保有していることを怖がっているとは思えません。韓国が最も怖れているのは、朝鮮半島でまた戦争が起こることであり、次に怖れているのは北朝鮮の突然の崩壊により、ソウルが難民であふれることです。
「統一できないままずっと分断されている」こともこわいかもしれませんが、それより戦争や突然の崩壊への怖れの方が、圧倒的に大きいというのが韓国の正直な気持ちではないでしょうか。「自分たちで武力制圧してでも南北統一」なんてことは、もはや夢にも考えていないと思います。
ということで……「この問題は解決しない。その理由は、誰も解決を真剣に望んでいないから」というのがちきりんの結論です。誰も望んでないことは起こりません。北朝鮮の崩壊を望んでいるのは、人権活動団体と、ちきりんのようなミーハー的な興味のある人だけです。残念ながらそんな人には何の政治力もないのです。
そんじゃーね。
『自分のアタマで考えよう』(ダイヤモンド社刊)
ちきりんさんによる新刊『自分のアタマで考えよう』がこのほど発売されました。
「プロ野球の将来性」「結論が出ない会議の秘密」「少子化問題のゆくすえ」「婚活女子の判断基準」「消費者庁が生まれた真相」「就活で失敗しない方法」「自殺の最大の原因」など、社会問題や日常の疑問を考えながら、「ちきりん流・思考の11のルール」を分かりやすく解説しています。
著者プロフィール:ちきりん
兵庫県出身。バブル最盛期に証券会社で働く。米国の大学院への留学を経て外資系企業に勤務。2010年秋に退職し“働かない人生”を謳歌中。崩壊前のソビエト連邦など、これまでに約50カ国を旅している。2005年春から“おちゃらけ社会派”と称してブログを開始。著書に『自分のアタマで考えよう』『ゆるく考えよう 人生を100倍ラクにする思考法』がある。Twitterアカウントは「@InsideCHIKIRIN」
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