チャンスは心構えした者にほほえむ――“セレンディピティ”を大切に(2/2 ページ)
チャンスはこの空間に無数に行き交う電波のようなものである。感度の良いラジオなら、いろいろと音がつかまえられる。感度の悪いラジオだと、ほとんど何も受信できない。
偶然をとらえて幸福に変える力は鍛えられる
こうしたチャンスを鋭くつかみ取る能力を表す単語が「セレンディピティ(serendipity)」です。「セレンディピティ」は、オックスフォード『現代英英辞典』にも載っている単語ですが、まだ簡潔に言い表す訳語がありません。
東京理科大学の宮永博史教授は『成功者の絶対法則 セレンディピティ』の中で、セレンディピティを「偶然をとらえて幸福に変える力」としています。「ただの偶然」をどう幸福に導き、「単なる思いつき」をどう「優れたひらめき」に変えることができたのか、古今東西の科学研究の現場や事業の現場での事例を集めて説明してくれています。
また、セレンディピティを「偶察力」(=偶然に際しての察知力で何かを発見する能力)と紹介しているのは、セレンディピティ研究者の澤泉重一さんです。澤泉さんは、人生には「やってくる偶然」だけではなく、「迎えに行く偶然」があるといいます。
つまり後者は意図的に変化を作り出して、そこで偶然に出会おうとする場合をいいます。その際、事前に仮説をいろいろと持っておけば、何かに気付く確率が高くなる。基本的に有能な科学者たちは、こうした習慣を身に付け、歴史上の成果を出してきたと、彼は分析しています。
さらに、パデュー大学のラルフ・ブレイ教授によれば、セレンディピティに遭遇するチャンスを増やす心構えとして、「心の準備ができている状態、探究意欲が強く・異常なことを認識してそれを追求できる心、独立心が強くかつ容易に落胆させられない心、どちらかというとある目的を達成することに熱中できる心」と言います(澤泉重一著『セレンディピティの探究』より)。
いずれにしても大事なことは、セレンディピティは「能力」という意味合いを含んでいることです。これは、能力だから強めることができるという発想にもつながります。単に「棚からボタ餅」でぼーっと幸運を待っている状態ではないのです。(村山昇)
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