靴磨きから学ぶ、勝てる利用シーンの探し方(2/2 ページ)
お客さんが来るのを待つ“来店型”ビジネスが主流だった靴磨きサービス。しかし、マット・コンサルティングは“訪問型”ビジネスへと売り方を方向転換して成功しました。どのような戦略のもと、方向転換したのか分析してみました。
勝てる利用シーンを選ぶ
訪問型に転換したからといって、住宅に飛び込み営業しても、記事にもあるように共働きで主婦もいないため、顧客になる可能性は低いです。仮に主婦がいたとしても、自宅には「自分でもできる靴磨きセット」がある可能性が高いので、顧客になる可能性は低いままです。つまり、住宅にある靴磨きセットという競合に負けることになります。
そこで、飛び込み先として、「会議中」という利用シーンを選択したわけです。その会議中というシーンには靴磨きセットはまずないでしょう(会社によっては準備してある可能性もありますが)。その結果、競合が排除され、売れる可能性が高くなるわけです。
会議中であれば、本人が靴を履いていない場合、靴を使っていない隙間時間となります。そして、会議が終わったら当然外回りの営業をするため、靴がきれいだと気合いも入るでしょう。そこに着目して、訪問型というスタイルと会議中という利用シーンを連鎖させ、競合のいないシーンで強みを生かしています。
しかも、会議中にお客さんの靴を磨いていたら、それを見たほかの人(同僚)も頼んでくれる可能性が高くなります。つまり、リピートや口コミによる顧客増大を実現していく可能性が高いということです。
これは「出張できる身軽さ」という強みを生かして訪問型を実現し、さらに、利用シーンを「会議中」とすることで、競合も排除して、その効果を最大化している事例だと思います。
強みを生かす形で売り方を方向転換する場合、その利用シーンには今までいなかった競合が存在します。その競合をどうすれば排除できるのか? その点を考慮して、強み、売り方、利用シーンを連動させましょう。そうすれば、勝てるシーンで戦うことにつながっていくと思います。(荻野永策)
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