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コラム

石油を“武器”にできる国はどこ――今と昔の勢力図松田雅央の時事日想(1/3 ページ)

「石油を交渉の武器にする国は強い」と思っている人も多いのでは。石油を輸入できなくなれば苦しい立場に追い込まれる国も多いが、その一方で輸出できなくなる国も痛みを伴うのだ。

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著者プロフィール:松田雅央(まつだまさひろ)

ドイツ・カールスルーエ市在住ジャーナリスト。東京都立大学工学研究科大学院修了後、1995年渡独。ドイツ及び欧州の環境活動やまちづくりをテーマに、執筆、講演、研究調査、視察コーディネートを行う。記事連載「EUレポート(日本経済研究所/月報)」、「環境・エネルギー先端レポート(ドイチェ・アセット・マネジメント株式会社/月次ニュースレター)」、著書に「環境先進国ドイツの今」、「ドイツ・人が主役のまちづくり」など。ドイツ・ジャーナリスト協会(DJV)会員。公式サイト:「ドイツ環境情報のページ


 EU(欧州連合)外相理事会は1月23日、核開発を続けるイランへの制裁措置として、イラン産原油の輸入禁止を正式決定した。長期契約を含めた全面禁輸は7月まで先延ばししたものの、EUとしては過去にない厳しい内容といえる。

 米国とEUの措置に対抗するため、イランのガセミ石油相は29日「近く、いくつかの国への原油輸出を停止するつもり」(国営イラン通信)と発表した。イランは原油輸送の大動脈ホルムズ海峡の軍事的封鎖も示唆するなど、原油を巡る“ポーカーゲーム”が続いている。

 ここではEUとドイツの視点から、イラン原油の禁輸とホルムズ海峡の状況を検討してみたい。

影響の大きさはまちまち


ガソリン不足で、EU諸国はパニックになるのか(写真と本文は関係ありません)

 イランの原油輸出先としてEU諸国は中国(25%)に次ぐ20%を占めており、イラン経済に与える禁輸の影響は非常に大きい(2011年上半期)。ちなみに日本は15%を占めている(参照リンク)。逆にEUの原油輸入に占めるイラン原油の割合は5%と、日本の10%(2010年)に比べれば格段に小さい。

 従って、EUの輸入禁止措置は「イランに与える影響は大きく、EU経済が受ける影響は比較的小さい」と言える。

 ただし、これはあくまでEU全体の話で国によって事情は異なる。

 例えば財政破たんに直面するギリシャは原油輸入の半分以上をイランに依存しており、2011年上半期にはイランから日量16万バーレル、金額にして約1800万ドルの原油を輸入していた。EUの輸入禁止決定に伴い、急ぎ代替輸入先を見つけなければならなくなり、有力なのはサウジアラビアと伝えられている。サウジアラビアは十分な余剰能力をもつが、ギリシャがイランと結んでいた有利な条件までは引き受けてくれないため、ギリシャにとっては苦しい選択だ。

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