新幹線「300系」は、なぜスピードを追い求めてきたのか:杉山淳一の時事日想・新連載スタート(4/4 ページ)
3月のダイヤ改正で、東海道・山陽新幹線の300系電車が引退する。300系は「ひかり」よりも速い列車「のぞみ」として誕生し、鉄道ファンだけではなく、社会に大きなインパクトを与えた。この列車が誕生した背景には、JR東海の周到な準備と戦略があった。
300系を走らせるために
もうひとつ重要な点は、300系を走らせるための「線路と信号設備の改良」だった。東海道新幹線の全区間のうち、約4分の1にあたる曲線区間でカント(傾き=道路でいうバンク角度にあたる)を大きくして、通過速度を引き上げた。信号設備に最高速度領域を追加し、信号の受け持ち区間(閉塞区間)を細分化した。
東海道新幹線には、300系をきっかけとして、これ以外にも様々な改良が加えられたという。航空自由化の足音を聞きながら、JR東海では新幹線の価値を高める努力が重ねられた。
近い将来、東海道新幹線はN700系の改良型、N700Aが時速300キロで走るという。その礎を作った電車が300系である。その300系の引退に際して、私には「馴染みの顔がいなくなる」という以上に感慨深い思いがある。
杉山淳一(すぎやま・じゅんいち)
1967年東京都生まれ。信州大学経済学部卒。1989年アスキー入社、パソコン雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年にフリーライターとなる。PCゲーム、PCのカタログ、フリーソフトウェア、鉄道趣味、ファストフード分野で活動中。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。2008年より工学院大学情報学部情報デザイン学科非常勤講師。著書として『知れば知るほど面白い鉄道雑学157』『A列車で行こう9 公式ガイドブック』など。公式サイト「OFFICE THREE TREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」、Twitterアカウント:@Skywave_JP、誠Styleで「杉山淳一の +R Style」を連載している。
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