実力だけじゃダメ、プレッシャー耐性も必要な時代に:ちきりんの“社会派”で行こう!(3/3 ページ)
社会情勢の変化で、年功序列、終身雇用が崩れてきた日本企業。これからは、雇用への不安を抱えながらも高いパフォーマンスを出せる能力が大切になってくるとちきりんさんは語ります。
「実力」×「プレッシャー耐性」
よく「実力次第」と言いますが、これから大事になるのは、「一定のプレッシャー下で、どの程度その実力を発揮できるか」ということです。それは「実力」×「プレッシャー耐性」の掛け算で算定されます。実力のある人でも、プレッシャーに弱い人は成果が出せなくなるのです。
「周りがみんな良い人で、和気あいあいと助け合って、締め切りまで余裕があって、首になる可能性はほとんどないような環境であれば、私はすごくいい仕事ができます!」などということは、ほとんど無意味になります。
「実力100×プレッシャー耐性20の人」より、「実力50×プレッシャー耐性60の人」の方が高い成果が出せる時代になるのです。
昔は、期待されていてもオリンピックになるとプレッシャーに負けて結果を残せない日本人選手がたくさんいました。でも最近は日本人選手でも、プレッシャー耐性が非常に高い選手が増えています。
ちきりんは「日本人が自然とプレッシャーに強くなった」とは思いません。そうではなく、コーチや本人たちが「大きな大会で勝つためには、プレッシャーをマネッジすることが重要」と気が付き、そのための訓練を始めたのでしょう。今やプロアスリートの世界では、メンタルな力がフィジカルや技と同等以上に重要だということは、十分に理解されているはずです。
そして、そういう認識と訓練が、今や一般の人生を送る人にも必要になりつつあるのです。これまでは、オリンピック選手や、自分で選んで外資系企業に転職する人だけに必要だった「プレッシャー耐性」が、ごく普通の人にも必要になりつつあります。
プレッシャーとは何で、そういう時、自分は何を感じ、どんな気持ちになるのか。それを避けるため、乗り越えるため、気持ちをどのように保てばよいのか。そういったことについて何の知識も訓練もないまま、高いプレッシャーの世界に放り込まれる人たちは本当に大変です。
米国では、かかりつけのカウンセラーや精神科医がいるビジネスパーソンは珍しくありません。彼らもまたプロの手を借りて、プレッシャーをさばく支援をしてもらっているのです。職場うつが増加しつつある日本でも、こういったサポート体制の必要性はますます高まることでしょう。
そんじゃーね。
著者プロフィール:ちきりん
兵庫県出身。バブル最盛期に証券会社で働く。米国の大学院への留学を経て外資系企業に勤務。2010年秋に退職し“働かない人生”を謳歌中。崩壊前のソビエト連邦など、これまでに約50カ国を旅している。2005年春から“おちゃらけ社会派”と称してブログを開始。著書に『自分のアタマで考えよう』『ゆるく考えよう 人生を100倍ラクにする思考法』がある。Twitterアカウントは「@InsideCHIKIRIN」。
現在、前横浜市長の中田宏さんとの対談「ちきりん×中田宏、政治家を殺したのは誰か」が連載中です。
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