海外メディアにあって、日本メディアにないもの:河野太郎氏が、原発報道を語る(前編)(2/4 ページ)
原発事故から1年が経とうとしているが、メディアの報道についてどのように感じている人が多いのだろうか。事故前から「核燃料サイクル」を問題視してきた、河野太郎衆院議員が原発報道について語った。
海外メディアの突っ込み
――海外メディアの突っ込みとは、具体的にどのような感じだったのでしょうか?
河野:海外メディアの記者から最初に聞かれのは「モニタリングポストの数字が消えたこと」について。確かにモニタリングポストの数字が消えていたので、私は東電に確認した。すると東電は「電力供給が途絶えたので、数字が消えました。モニタリングカー(※)がまいります」と言っていた。
しかし海外メディアは毎日のように「モニタリングポストの数字がない」「モニタリングカーは原発周辺の放射線量の数値が一番低いところに行ってる。このことを政府は、なぜ東電にきちんと指示をしないのか」と言っていた。また「電力会社なのに、1週間が経っても電力が戻らないのはおかしいじゃないか。東電に対し、政治家はどういった指示をしているのか」といった質問があった。このように海外メディアは連日、しつこく取材に来ていた。
また東電は「計画停電」を発表したが、環境エネルギー政策研究所(ISEP)の飯田哲也さんは「間違っている。揚水発電や自家発電を使えば発電できる。その電力が含まれていない」と反論していた。しかし東電や政府は「計画停電は必要だ」として、粛々と進んでいった。
そのときの日本のメディアは「計画停電が行われる順番はこうです」といった感じの報道をしていた。計画停電について「東電はウソをついているんじゃないですか」といった報道はなかった。夏に電力が足りるかどうかというときも、ドイツのメディアは東電の発表資料に「(揚水発電や自家発電などの)数字がきちんと含まれていない」ことを問題視していた。「なぜ数字がきちんと含まれていないのか」「数字が入っていないことに対して、政治はなぜ押し返さないのか」といった取材が、私のところにたくさんあったのだ。
――東電で行われていた記者会見について、どのように感じられましたか?
河野:私もテレビやネットなどで見ていたが、記者からの質問が多くて「とにかく長い」という印象が残っている。なので途中で見ることを止めたことがある。
記者会見をフルオープンにして、多くの記者が徹底的に質問をするということは大事なこと。しかし東電の会見で、本当に必要なことを掘り下げることができたのだろうか。多くの記者が質問することで、どんどんテーマが移ってしまったような気がしている。
「記者クラブは閉鎖的。だからフルオープンしなければいけない」といった議論がある。しかし東電が記者会見を行っているときには誰かがリーダーシップをとって、「この問題を今日はここまで掘り下げよう」といった形で進めたほうがいいのではないだろうか。東電側が情報を隠そうとしているのに対し、多くの記者がいろんな角度からこじ開けようとしていた。しかし全方位から撃っているようなもので、核心にまで届いていなかったと思う。
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