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政治家を逃がしてはいけない――今、記者に求められること河野太郎氏が、原発報道を語る(後編)(2/3 ページ)

原発事故後の政府の対応に、不安を感じた人も多いだろう。また政治家への取材で、メディアに何が足りなかったのだろうか。衆議院議員の河野太郎氏が語った。

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政府の対応

――原発事故が起きて、政府の対応で問題に感じたことは何ですか?

河野:一番残念なことは、政府がきちんとデータをとっていなかったこと。きちんとデータをとっていれば、放射線に関する知見を増やすことができたはず。なぜデータをきちんととらなかったのか。起きてしまった事故を「隠したい」という意図があったのではないだろうか。

 またどういう判断を何にもとづいてしたのか、という議事録がとられていなかった。つまり失敗はしてしまったが、その失敗から次に学べるように「失敗の記録をとっておこう」という部分がなかったのだ。これは政府の対応としては、ダメだったと思う。

 今回の失敗をどこまで知見として蓄積することができるのか。事故が起きて1年が経とうとしているので、もはや手遅れかもしれないが、これから次に学べるようにしておかなければいけない。

――政府はSPEEDI(放射性物質の拡散予測システム)の情報をきちんと開示しませんでした。このことについてどう思われますか?

河野:3月21日だったと思うが、海外メディアの記者が議員会館にある私の部屋にやって来た。「なぜ日本政府はこの情報を公開しないのか?」と言って、資料を持ってきた。この紙は何だ? と聞いたところ「SPEEDIだ。これを知らないのか?」と聞いてきた。

 SPEEDIというシステムがあるのは知っていたが、その情報を見たのは、そのときが初めてだった。「これがSPEEDIかどうか分からないので、1日猶予をくれ」と言って、文部科学省に連絡した。手元にある資料が本当にSPEEDIかどうか分からない。最新のSPEEDIの情報を持ってきてくれ、と伝えた。

 そして文部科学省が持ってきた資料と、海外メディアの記者が持ってきた資料は同じだった。首相官邸に、なぜSPEEDIの情報を開示しないのか? と尋ねたところ「それは原子力安全委員会が担当している」という返事が返ってきた。原子力安全委員会の斑目春樹委員長に、説明をつけて公開したほうがいいんじゃないでしょうかと聞いた。すると斑目委員長は「それは私の権限じゃありません。官邸です」と話した。そして細野豪志首相補佐官(当時)に連絡した結果、やっとSPEEDIの情報が一部公開された。

 なぜ海外メディアの記者がSPEEDIの資料を持っていたのか。どこからその情報を得たのかよく分からない。「政府はなぜSPEEDIの情報を公開しないのか」と思った関係者が、メディアにリークしたのかもしれない。「日本のメディアはダメだから、海外メディアに情報を渡したのではないか」といった噂もあった。その後、IAEA(国際原子力機関)に情報を出していたことが明らかになったので、IAEAの関係者からもらったのかもしれない。

 文部科学省に連絡しても、どの部署がSPEEDIを担当しているのか分からなかった。そして「担当部署」と言われているところに、なぜSPEEDIの情報を公開しなかったのかと尋ねると「事故後、“スピーディ”に情報公開するように心掛けています」と言われた(苦笑)。

 原子力委員会の斑目委員長はSPEEDIの情報を公開することについて、自分には権限がないと思っていた。また細野首相補佐官も自分の権限ではないと思っていた。この問題については、かなり混乱していたことは事実である。

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