コラム
JR東日本は三陸から“名誉ある撤退”を:杉山淳一の時事日想(6/6 ページ)
被災地では、いまだがれきが山積みのままだ。現在、がれきをトラックで運び出しているが、何台のトラックが必要になってくるのだろうか。効率を考えれば、鉄道の出番となるのだが……。
JR東日本はほかにやることがたくさんある
もしJR東日本に鉄道復旧の考えがないならば、いっそJR東日本にはこの地域から手を引いていただき、JR貨物が主導して整備に当たる方法も考えられる。旅客輸送は三陸鉄道が実施し、JR貨物に線路使用料を払う。
むしろ、貨物輸送という仕組みがなくても、JR東日本は大船渡線と山田線を三陸鉄道に譲渡していいのではないか。そうすれば、これらの路線は黒字会社ではなく赤字会社の路線になり、国の復興支援を受ける条件が整う。路線を自治体に譲渡し、上下分離を検討してもいい。
ローカルバスの運行なら自治体でもできる。JR東日本にこだわる必要はない。国がしっかりと支援策を提示しないなら、JR東日本はあえて路線を次の担い手に譲る“名誉ある撤退”という選択肢もあるだろう。なにしろJR東日本は関東から東北にかけて約7500キロメートルの路線網を持っている。東北、いや日本全体の復興のために、JR東日本がやるべきこと、国民から託されたことはたくさんあるはずだ。
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