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コラム

東大数学、今なら解ける!?――ゆとり教育と詰め込み教育のせめぎあい(1/3 ページ)

先週末に行われた国公立大学の前期試験。東京大学の数学1問目では驚くほど、簡単な問題が出たことが話題となった。しかし、筆者は今後は理数系教育の強化で、難化していくのではないかと予測する。

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著者プロフィール:寺西隆行(てらにし・たかゆき)

株式会社Z会教材編集部理科課長(兼小学生コース教材担当)。幼児から大学生・若手社会人の教育に携わるZ会で、理科の教材編集に携わる社員のマネジメントと、小学生向け商材の開発担当を担う。前任はWeb広告宣伝・広報・マーケティングなどを担当。


 2月25日、26日と、東大を初めとした国公立大学で前期試験が行われました。本記事をご覧になっている方で、大学受験に関わったみなさまには、心からの吉報を祈るとともに、結果よりもここまで1つのことに集中して取り組んだ過程を、何よりも将来の糧にしていただきたいと存じます。


東京大学公式Webサイト

 さて、東大の入試問題。国語などはまだしも、数学の問題なんて「どうせ見ても解けない」「見る気も起きない」という人が大半ではないでしょうか。だから、ネット上に問題は転がっていても、わざわざ「入試問題掲載サイトを見に行こう!」なんて思いませんよね、社会人の方であれば……。

 そこで、本記事をご覧になったのをご縁と思い、だまされたと思って、これだけ見てください。

座標平面上の点(x,y)が次の方程式を満たす。

2x^2+4xy+3y^2+4x+5y−4=0

このとき、xのとりうる最大の値を求めよ。(東大文系数学、2012年第一問

 みなさんの目にはどう映りましたか? 僕は団塊ジュニアど真ん中の世代で(1973年早生まれ)、Facebook上の友人たちも必然的に僕と同じ世代の人が多いのですが、彼ら(もちろん文系学部卒業の方もいらっしゃいます)からはこんなコメントが寄せられました。

 「マジか! 昔は問題の時間配分考えたもんだけどなあ〜」

 「これ、マジですか?」

 「これ、差つくの?」

 「マジか! 22年ぶりでも解けた!(笑) 信じられない!」

 「久しぶりに判別式を思い出す必要があったけど、さびついた文系な私でも解ける、まじびっくりした」

 団塊ジュニア世代で、学生時代に塾の講師などでアルバイトしたことのある経験の方は、同じような感想を持つのではないでしょうかね、恐らく……。

 この問題のポイントは「やり方を入試日のタイミングで覚えて(暗記して)いれば、簡単に解ける。また、暗記しておくのもそんなに難しくはないレベル」「やり方を、入試日のタイミングで忘れていても、受験勉強中に何度か類題に取り組んでいて、そのときに『なぜそうするか』を理解していれば、試験中にやり方を思い出し、簡単に解ける。また、本問の『なぜそうするか』を理解することはそれほど難しいことではない」ということ。

 いわゆる「解法がすぐに思いつく」と、多くの人をして感じさせるタイプなんだと思います。学習したさまざまなパーツを頭の中で複合的に思考し、答案にあれこれ書いているうちに、解法の道筋が見えてくる……というタイプではないんですよね。

 もちろん、東大の問題すべてがこの程度、というわけではないのですが、1991年に東大を受験した自分の記憶をさかのぼっても、「(文系の)第一問ですら、ここまで簡単な問題は見たことがなかった」という感覚を持っています。

 かといって短絡的に「理数力の低下に迎合するような出題でケシカラン。東大は何やっているんだ、気骨を見せよ!」などと言うつもりはありません。本問を見た、Facebookの友人(団塊ジュニア世代)からのコメントを紹介します。

 「東大の問題はいつの時代も奇をてらったものはなくて、その時代の学習状況をきちんと反映したものだったから、何か拍子抜けしてしまった次第」

 このコメントの通り、東大の問題は「その時代の学習状況をきちんと反映したもの」なんです。「東大文系数学において、第一問に出題する問題として適切なのが本問」と出題側が(総合的に)判断した現実がここにあるだけで、迎合しているわけでも、(学力低下に)警鐘を鳴らすわけでもないのです。「選抜試験として適切」という判断があっただけで。

 また、(入試で図れる)「学力」にしても、数学の能力だけではないですしね。英語や国語、地歴公民……その他の力をトータルで見なければいけないわけで。

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