「あなたは確実にこうなる」と言う医者は“ハッタリ屋”:大往生したけりゃ医療とかかわるな(4)(3/3 ページ)
日本人は、医療に対して期待を抱きすぎではないでしょうか。この原因は何かと考えてみたところ、やはり新聞、テレビといったマスコミの影響が大きいと思われます。
本人に治せないものを、他人である医者に治せるはずがない
病気やケガを治す力の中心をなすものは、本人の「自然治癒力」です。だから、少々のケガや病気は、医者にかからなくても薬を飲まずに放っておいても治ります。
本来、医療は、本人の身体の反応する力を利用するものです。したがって、最後の場面において、血圧が下がってきたので上げようと、いくら昇圧剤を使っても、血圧が上昇しなくなる。これは、本人の身体が薬に反応しなくなったためです。
つまり「病気やケガ」は、医者や薬が、力ずくで治せるものではないということです。極論すれば、本人に治せないものを、他人である医者に治せるはずがないということになります。医療者は脇役で、お手伝いするお助けマン、薬はお助け物資、器械はお助けマシーンというわけです。
インフルエンザ流行時に、肺炎の併発に備えて、人工呼吸器が必要と強調されました。
しかし、人工呼吸器が肺炎を治してくれるわけではありません。呼吸機能が悪くなったので、代わりに器械が補ってくれる。その間に、本人が肺炎を治して呼吸機能を回復させれば、人工呼吸器は不要になって助かります。本人に、その力が失せていれば死ぬ、というわけです。
人工透析でも同様です。急性のものなら一時的ですむかもしれませんが、慢性のものなら、ずっと続けなければなりません。それが、あの器械が治すのではないことの証明です。
では、なぜ医療が発達したといわれるのでしょうか。
それは、昔なら、ちょっとでも臓器の具合が悪くなると手の打ちようがなかったのが、今は、臓器の機能がかなり低下しても、下支えができるということです。
その結果、以前なら死んでいたものが、死ぬでもなく助かるでもなく、ただズルズルと生かされている事態が起きることにもつながっているのです。
時々「病気を治せねェ医者はプロじゃねェ。俺なんざァ、何かをなおせなかったらお代は頂かねェよ」などと、江戸っ子気質の職人さんのような啖呵を切る患者にお目にかかります。
しかし、医療に請け負いはないのです。
(続く)
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