突然現れ、気が付くと消えている……駅ナカの不思議な売店の裏側:エキなか!(2/2 ページ)
駅ナカに突然現れ、気が付くと消えている蜃気楼のような臨時売店。物産品からネクタイ、スイーツまでさまざまな商品を販売しているが、どのように運営されているのか、その内側を解説する。
あくまで“臨時”の店舗
臨時売店はその名の通り“臨時”であり、店舗が“常設”になることは許されていない。通勤ラッシュ後に店舗をオープンし、帰宅ラッシュ後には跡形もなく片付けておかなければならない。そのため、必要な時に店舗展開でき、時間になると素早く収納できる販売什器が必要不可欠となる。
また、同じ臨時売店でも、販売手法が異なることがある。大きな違いは、お客さんが欲しい商品を手に取ってレジに持っていき精算する「セルフ販売」と、お客さんが店員に欲しい商品を指定して店員が商品を取り上げてレジ精算する「対面販売」の2つ。
商品単価が高くなるほど「対面販売」の比率が高まるのだが、一般的な傾向としては「セルフ販売」の方が売り上げは好調。単価が200円以下で、1品ごとに個包装されている商品が「セルフ販売」との相性が良いのだ。
立川駅より東京駅での売り上げの方が少なくなることも!?
もちろん駅によっても、売れ筋は変化する。以前、JR立川駅で販売したスイーツ店が好評で、売り上げが1日30万円を記録したため、JR東京駅にも出店したところ、なぜか1日10万円に減ってしまったことがある。駅の乗降客数や臨時店舗前の通行人数は、圧倒的に東京駅の方が多いにも関わらずである。詳しく分析していないため不明な点も多いが、駅特性が物販に影響した事例である。
ちなみに、JR東日本リテールネットではJR東日本の営業エリア以外にも進出している。ある私鉄の駅で1日10万円の売り上げだった臨時売店コーナーを引き継いだ時は、人気スイーツ「とろけるブリオッシュ」を展開するなどしたことで、1日30万円の売り上げにまで伸ばすことができた。
今後も、これまで積み重ねてきたノウハウを武器に、日本全国の駅ナカ臨時売店でこうした取り組みを推進していきたいと考えているところだ。
著者プロフィール:笠井清志
JR東日本リテールネット・コンビニエンス営業部長。ゼネコン、コンビニチェーン本部、コンサルティング会社を経て現職。小売業・サービス業を中心に多店舗展開チェーン(特に駅ナカ・空港等の限定商圏マーケティング)を中心に活動。NEWDAYSが2007年度から3年連続で1店舗平均日商でセブン-イレブンを抜いた実績のサポートを行う。月刊コンビニ(商業界)での執筆、海外メディア「Financial Times」等取材実績多数。著書に『コンビニのしくみ』(同文館出版)や『よくわかるこれからのスーパーバイザー』(どちらも同文館出版)がある。お問い合わせはこちら(kiyoshi_kasai@j-retail.co.jp)まで。Facebookはこちら。
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