アップルが秘密主義を徹底させている理由:インサイド・アップル(3)(3/3 ページ)
アップルの元社員はこのように言った。「(アップルは)知らせない文化の究極形」だと。秘密主義を徹底させるために、オフィスの中ではどのようなシステムが構築されているのか。またジョブズはウォルト・ディズニーから何を学んだのか。
アップルは社内の秘密保持を強化するために、驚くほど入念なシステムを作った。その中心にある考え方は「開示」だ。会議であるトピックについて話すためには、部屋のなかにいる全員にそのトピックが「開示」されていることを確認しなければならない。参加者全員が一定の秘密を共有しているということだ。
「全員に開示されているとわかるまで、どんな秘密についても話すことができない」。元社員はそう語った。結果として、アップル社員と彼らのプロジェクトは、パズルのピースになる。パズルの完成図は組織のトップレベルにいる人間にしかわからない。レジスタンス組織が敵陣内にもぐりこませる下部集団のようなもので、メンバーは仲間を巻きぞえにしうる情報を与えられない。かつてアップルのハードウェア部門の責任者だったジョン・ルビンシュタインは、2000年、あまり感心できないが効果的なたとえを用いてビジネスウィーク誌にこう説明した。
「うちにはテロリスト組織のように下部集団がある。すべては“知る必要があれば”ベースだ」
あらゆる秘密社会と同じく、最初から信頼ありきではない。新たに加わった者は、一定期間、少なくとも上司の信頼を得るまで蚊帳の外に置かれる。社員からよく聞くのは、具体的な製品ではなく「コア・テクノロジー」にかかわる仕事をしたとか、数カ月の試用期間中、グループの残りのメンバーのそばに坐ることを許されなかったとかいう話だ。 (翻訳:依田卓巳)
(続く)
関連記事
- アップルの新入社員が、初出社日に“学ぶ”こと
アップルの特徴のひとつに「秘密主義」が挙げられる。例えば自社ビルで工事が始まっても、そこで何が行われているのか――社員は知らない。また新入社員もどの建物で働くのかを知る前に、「偽の地位」が与えられるようだ。 - アップルに学ぶ、“あいまいさ”思考
日本人は手先の器用さ・繊細な感覚を生かしハード的に優れたモノを作ってきたが、形状・性能・価格といった「form」次元だけで戦うのは難しい時代に入った。「form」を超えて、どう「essence」次元にさかのぼっていくか、そのためにどう「あいまいに考える力」を養うか──次のステージはそこにある。 - スティーブ・ジョブズはどこにでもいる
AppleのCEOを辞任するスティーブ・ジョブズ。ジョブズは天才だ、魔法のように素晴らしいデバイスを作る、とあがめる人は多いが、わたしの考えは少し違う。 - 今の日本に必要なことは何か? スティーブ・ジョブズの死を考える
スティーブ・ジョブズ氏が亡くなった。アップル製品は私たちの生活を大きく変えたが、なぜ日本企業にはそれができなかったのだろうか? 何度かインタビューしたときのことを思い出しながら、類まれな経営者のこれまでと、今の日本に必要なことを考えてみる。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.